第76話 えっちゴム付き様の秘策
中間試験の一週間前には部活動は禁止となり、速やかな下校が促される。図書室も空いていないのだ。
その状況下で勉強する場所といえば、ファストフード店かファミレスになる。
前回、英さんの家で勉強会を行ったのは外で他の生徒と鉢合わせしないようにするためと、グループ内のメンバーを一部のけ者にする形になってしまうからだった。
現在は吉祥院さんを入れてグループのメンバーは全員揃っている。仮に他の生徒に見つかったところで問題にはならないだろう。
「嫌だ! そこだけは絶対に行かない!」
そして、現在。越後さんは最適な勉強場所へ向かう中、ひたすら駄々をこねていた。
三人で引っ張ってるのに越後さん一人に力負けしてるってどういうことだよ。筋力には自信あったんだけど……。
「お姉ちゃんの力だけは借りない!」
そう僕らが越後さんを連れていくのは生徒会室。
未来のセクシー女優えっちゴム付き様こと越後睦月、越後さんのお姉さんの根城である。
生徒会室だけは試験前でも解放されていて、生徒会役員は生徒の相談に乗ってくれる。
成績の相談なら間違いなく乗ってくれるはずだ。
「一年生の学年上位が、集まったところで! リラの成績を、どうにか……できるわけないでしょ!」
「いい加減、意地張るの、やめなって!」
「無駄な、抵抗は、やめなー!」
三人で必死に越後さんを生徒会室まで連れていく。
越後さんの成績を上げるために、何で僕達がこんな苦労をしなければならないのか。
『リラ……』
でも、モモの辛そうな表情を見れば何もしないという選択肢は存在していなかった。
未来で何があったかは知らないし、教えてくれないだろう。
ダメな大人になってしまったモモだが、彼女もまた英さんなのだ。
好きな人が苦しんでいるのを放置できるわけもなかった。
「ちょっと、二人で越後さん抑えてて!」
「ちょ、白君! 今、抜けられると、リラが暴れるから……!」
「くゆちゃん、ここが踏ん張りどこだよー!」
「絶対違う!」
僕は生徒会室に急いで向かう。
「失礼します!」
「ノックをしてから入れ――げっ、白純!」
「あら、白君いらっしゃい」
僕が生徒会室に入った途端、副会長がすごく嫌そうな顔をして、生徒会長が暖かく迎え入れてくれた。
「何か相談ごとかしら?」
「越後さん――妹さんの勉強みんなで見る予定だったんですけど、僕達だけじゃ、その力不足でして」
「そっか、中間のときの成績は白君達が……」
生徒会長は僕の言葉にどこか納得したような表情を浮かべた。
「わかったよ。凛桜ちゃん連れてくる魔法の呪文を教えてあげる」
それからニヤリと笑うと、僕に秘策を授けてくれた。
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