第14話 一狩り行くわよ その1
放課後。案の定、今日も英さんは家にやってきた。
こんな頻繁に男子の家に遊びにきて家の人からは何も言われないのだろうか。
「一狩り行くわよ」
家に上がるなり、いきなり英さんはそんなことを言い出した。
「いいけど、何を狩るの?」
一狩り行く。その一言だけで英さんが何をしたいのか理解できる。
クリーチャーズハンター、通称クリハン。
基本的に子供向けのモンテと違い、大型クリーチャーを狩猟するゲームである。
協力プレイもできるし、一種のコミュニケーションツールとしても有能なゲームだ。中学のときは友人作りのためにお世話になったものである。
こういうゲームをやるときは、プレイスキルの差によっては相手に寄生するようなプレイが問題になるが、どうせ英さんは姫プするようなタイプじゃないだろうし気にしなくてもいいだろう。
「バタゴリラよ」
「……越後さんでストレス溜まったんだね」
隠す気のない直球過ぎるストレスのぶつけ方には苦笑せざるを得ない。
「それじゃ、先に部屋行ってて」
「はいはーい」
英さんが家にくると、僕が飲み物などを準備する間に英さんが先に部屋でくつろいているという流れができあがりつつある。
『いやぁ、紅百合とクリハンとか懐かしいな! この時代だと〝
そして、僕がそういった準備をしているときに限ってクロが現れる。
「未来でもクリハンって人気なの?」
『そりゃそうだろ。モンテと同じでゲーム界を代表するビッグタイトルだ。俺が死んだ時点での最新作は〝クリーチャーハンター ノヴァ・ルナステラ〟だったか』
「いつの間にか数字じゃなくなってる……」
クリハンは毎回新作が出る度に数字が一つずつ増えていたのだが、クロの言うタイトルではもはやナンバリングがよくわからないことになっていた。
間にどれだけシリーズ作品が出たのかは不明だが、数字がタイトルに使われなくなるということは、それだけたくさんの作品が出たということなのだろう。
『俺も紅百合もモンテと同じくらいやり込んでたから、プレイ時間結構いってるぞ』
「他にやることなかったのかよ」
『基本的に家だとゲームで殺るかベッドでヤるかの二択だからな』
あまりにもろくでなしが過ぎる。未来の英さんもどうしてそんな状態になってしまったのだろうか……。
『そうだ。プロハンターの俺が教えてやろう』
「何がプロハンターだよ」
とことんやり込んでいるのなら、そう名乗るのも納得ではある。さて、未来でさんざんクリーチャーを狩ってきたハンター様はどんな助言をくれるのか。
『紅百合は耳が弱い。攻めるときは――』
「英さん待たせちゃ悪いし、早く行かなきゃー」
『相変わらずノリが悪ぃなぁ』
女性しかハントしないろくでなしハンターの亡霊は置いて、僕はお菓子と麦茶を持って部屋に向かった。
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