第7話 そして俺は入部した。
俺は、その日の部活見学が終わると、『生物研究部』への入部届を持って、すぐに1階の職員室へと向かった。
こんな会話があった。
『それで、夏瑪くん。どうする? ここに入部するかい?』
『あたしはイヤよ。なんで男のあんたがココに入れると思ってんの?』
『
『……そうだけどぉ……。』
『……あの、失礼かもしれないですけど、こんな部活で『人数』とか重要なんですか?』
『ああ、言っていなかったか。というか、君も『部を設立する条件』があるのは、担任や部活関係の書類で見聞きしなかったかい?』
『ああ……えーっと……。』
『ふふっ。まあ、君が気にするようなことではないかもしれないね。……端的に言うと、『部活を継続するのに部員が4人以上必要』なのさ。それも、アクティブな部員がね。』
『アクティブ……籍を置いてるだけじゃダメなんですか?』
『そうだね。いちおう、部活の維持にも経費がかかる。『ハムちゃん』や『金太郎』たちの世話もあるからね。……
『現在、この『生物研究部』には3年生が2人、そして2年生の私たちが2人の、計4人在籍しているが、活動してるのはこの通り、私と水仙だけなのさ。活動……つまり、生物の世話もそうだが、部費を出しているのも私たちだけ。』
『……別に、飼育するためのお金なら、あたしたちだけでも出せるのに。』
『……まあ、それはそうだが、学校側が定めた規則……『部費を納める能力がある人員』を『部員』と定めている以上、この『人数』についての問題は、私たちの
『……人数が必要な理由は分かりました。俺で良ければお力添えしますよ。』
『ふふっ。ありがとう、助かるよ。君としては不本意かもしれないがね。』
『……いや、そんなことないです。なんか、おもしろそうですし。』
『……ふん、どこがおもしろいってーのよ。テキトー言ってんじゃないわよ、ったく。……あれっ、電源つかない……あれっっ!?』
『そのスマホ、防水じゃ無いのではないかい?』
『はあっ!? 先に言ってよッッ!?』
『いや、てっきりウェットシートなどで拭くのかと思っていた矢先、蛇口のハンドルに手をかけたから、こちらも驚いてしまってね。』
『バカっ!!
『ははっ。すまないね、私にも非があるのは認めよう。修理費を半額ほど負担するよ。』
『要らないわよ!!』
かくして、入部の許可を得た俺は、担任へ書類を提出し終えて帰路についた。
あのとき、あまりに混沌とした空間から逃げるように退室したわけだが、訊きそびれたことがある。
活動している部員が4人以上必要、ということは、俺以外に入部する人が1人以上必要なはずだ。彼女らの口ぶりから、他に見学しに来るような人はいなかったようだし、いったいどうするつもりなのだろう。
彼女らの感じからすると、あの2人だけで活動していた期間は決して短くは無いだろう。ということは、部員が4人を下回ったその時点で、すぐさま部活動が解体されるわけではない。更新があるのはおそらく、この時期。1年に1度、新入生の入部申請の時点で更新されるのだろう。
つまり、明日。入部届の提出期限である、明日の18時に、決まる。
もし『生物研究部』が解体されたとなれば、俺は二度と青蓮と関わることは無くなるだろう。……そんな気がする。
これまで意図的に避けていたのが嘘のように、俺は彼女に強烈に惹かれてしまっている。彼女との接点である『部活』を失いたくない。
どうにかして、もう1人見つけ出さなければ。
俺は帰路の途中、たしかな決意を胸に秘めた。
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