挑戦するには

「おら、ジン。これが今日の分だ。」


「ありがとうございます!!」


「ああ。また明日な。」


「はい!!」


俺は1日の小作農として働き、半人前分の仕事の対価として食糧をもらい、帰宅する。


「おかえり、ジン。」


「ただいま、母さん。これ、今日の分。」


「うん。毎日ありがとね。」


「しょうがないよ。父さん死んじゃったんだし。」


「私の体が丈夫だったら、、、」


俺の体と心はジン君(10)なので本当の母親として接している。


「大丈夫だよ。とりあえずご飯にしようよ。」


「そ、そうね。早く、夜ご飯にしましょう。」


(ご飯といってもお腹いっぱい食べられないしな。これをどうにかしないと。)


ーーーーーーーーーーーー

俺が雨の日に棒を振り回して1月が経った時、


ブン!!


明らかに強い一振りが出た。


「これはまさか。」


俺は、一度構えてゆっくりともう一振りする。


ブン!!


「出来た。これが強撃か。」


俺(ジン君)の記憶の中に微かにある強撃のスキルの話。木こりのおっさんが使っていたはずだ。

このスキルは単純なスキルで打撃の威力が少し上がるらしい。

俺が棒を振っているだけなので打撃としてカウントされるか分からんかったが、続けて良かった。


「待っていろ。魔物と小動物!!俺は明日から肉を食う!!」


ーーーーーーーーー

雨の日

農民のもヒエラルキーがもちろんある。

まだ子供である俺は、一番下だ。土地を引き継ぐわけでもないしな。


「肉だ。肉。肉が食いたいんだ。」


いいかげん野菜のスープと黒パンには飽きた。いいかげん腹一杯食べたい。


森の中を歩いても一向に生き物が見つからない。木の洞の中を探しても何もいない。

村より遠くに行くと魔物がいるし奥にも行けない。


「虫は食いたくないし木の実もないし、どうしよ。」


この世界では前世より体が資本だと思う。多分。

だから、なるべくタンパク質はとったほうがいい。はずだ。

それから、何もなかったので、軽く道に迷いながら帰った。


ーーーーーーーーーー

晴れの日は、毎朝『強撃』を3回打つ。

スキルを使うにはスキルポイントなるものが必要らしく、今の俺には強撃は一気に3回までしか出せない。

時間をあけたら回復するから、時間をかけてからもう一度スキルを使う。

これでスキルレベルを上げていきたい。


「行ってらっしゃい。」


「行ってきます。」


母親に見送られながら,今日も空腹の体で労働に勤しんで、日が暮れたら帰る。帰ったら、スキルを使って、木の棒を振り回して、剣術もどきを頑張る。

足りない飯を食って、腹を減らしながら寝る。


雨の日に食べ物を探す生活をさらに一月かけた。

しかし、一回も肉を食べられなかった。


「やってられるか。」


俺は森の奥に進むことを決意した。

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