弟が絶賛気絶中の隣で
「ごめんね、
「
頭の中に
「昔から
「心配しなや、手加減したわ」
「そ、それなら良いけど……」
不安げに
「だから、陛下。王弟殿下は山に捨ててきて良いです? 陛下がおれば充分でしょ」
「何言ってるの、
だから、の使いどころがおかしい。脳内には、ハハハと
その後、
「……男には気を付けろって……里では誰も手を出してこなかったし……」
「長がおったからや」
「お父様が?」
どういうことだと父を見るが、彼は知らぬ存ぜぬとばかりに明後日を見ていた。
「手ぇ出したら、夜闇に乗じて首切られとったわ」
「俺も、この場に長さえおらへんかったら……クッ」
何を悔しがっているのか、久里は拳を握っていた。
「それで、今そっちはどんな状況になっているんだい」
「なるほど、項淑妃か。先帝崩御の際に後宮を出られて、確か今は南の寿虎府近くの離宮にいるんだったか。先帝の后妃の中で蘭賢妃のことを知っている者は、確かに母上と項淑妃くらいしか残っていないだろしね」
「すごいわね。先帝后妃の居場所なんて覚えてるのね」
「離宮の維持も、私の役目だったから。
黒幕捜しが最優先だといっても、
(それに比べて私は……)
針の先で突かれたように胸がツキンと痛んだが、
「しかし、まさか母上が毒を盛られていたとは……」
「多分、あなたに心配をかけないように黙っていたのね。皇太后宮を訪ねてもなかなか会ってもらえなかったもの」
「私……というか、
「蘭賢妃からそのまま武官にまで手が伸ばせそうだな」
「そうね」
早く
(飛訓ってば、正体がバレてから遠慮ってもの捨てた節があるのよね。あんな……あんな目で私のことを見るし……)
熱の籠もった、今にも溶けそうに潤んだ目で。最初に抱いた『冷めた顔をして、明るさや闊達さなど微塵もない』などという印象は今や微塵もない。胡散臭い笑みは、いやらしさが滲む嗜虐的笑みになった。
(……護衛兵として駄目じゃない)
とにかく、彼のためにも早めに
「それで、女人の姿で項淑妃の元へ行くって話やけど、顔はどないすんねん」
「顔? どうするって何が?」
伸びてきた
「密かに訪ねるっていう話やけど、このままやとすぐに陛下てバレるわ」
「ああ」と、
「じゃあ、花美人の顔で――」
行くわ、と言い切る前に、
「……なんでよ。お姐様達直伝の化粧なのよ?」
後宮に后妃として潜入する際、花楼にいる狗哭のお姐様方に化粧法を教わった。通称『これで皇帝の寵愛もほしいまま! 無敵に寵妃顔』だ。皇帝も
「だからやろ。あないケバケバド派手な顔で後宮外をうろついとったら、即通報案件や。花街の妓女が逃げ出した思われるわ」
それほどか?
「ごめんね、
声音だけでも『お腹いっぱい』と言っているのが伝わってきた。
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