あなたまで、なんなのよ!?
すっかりお決まりとなった、長牀での横並びの座り方。
ずいっと座面を滑って、
「まさかとは思うが、お前……あの護衛兵に正体がばれたなんてことはないよなあ?」
「それで、項淑妃は寿虎府の近くの離宮だったっけ」
「下手くそ過ぎんだろ」
間髪容れず、頭を鷲づかみされる。
「お、ま、え、なぁっ! どうりで、あいつのお前を見る目が前と違うと思ったんだよ!」
「きゃぁー!」
こめかみにぶっとい青筋が走っている。怖い。とても怖い。
「不可抗力だったのよ! 毒のせいで抵抗もできなかったし、緊急事態だったのよ!」
「む……毒か」
「大丈夫よ。飛訓は虎文に絶対的な忠誠を誓ってるから、ばらすようなことはないわ」
その他に色々と問題はあるけど……。
そこは言わない。面倒くさくなりそうだし。
「あいつは確かに兄上が皇太子時代からの護衛だからな。そこの心配はしてないが……」
やっと頭に食い込んでいた手を離してくれた。その代わり、
「まさか、母上を訪ねるのは二人だけ、なんて言わないよな?」
「そのつもりだったけど……」
公務で訪ねるわけではないし。何より、皇帝として訪ねたらまた禁軍が護衛に出て来る。そうなれば、護衛と称して旅路で命を狙われる可能性が高くなるのだ。日華殿の中よりも格段に身を守るのが難しくなる。だから、私的にひっそりと訪ねるつもりだったのだが。
「皇帝は体調を崩してるってことにして、あなたに代理を頼もうと思ってたのよ」
「嫌だ」
「嫌だって、そんな
「ジジイはお前が……皇帝が母上を訪ねることは知ってるんだろ」
ジジイ……項中書令のことか。
「ええ」
「だったら、お前がいなくなっても、事情を知ってるジジイが上手くやるだろうさ。だから……」
「だから?」
「俺も行く。母上に会うのも、俺がいたほうが色々滞りなく済むだろ」
「んー……まあ、そうかもね。息子のあなたが訪ねていったほうが、項淑妃も警戒しないでしょうし。色々と聞かせてくれるかもね」
飛訓も
「じゃあ、訪ねる日が決まったら改めて知らせる――わぁあっ!?」
さて、と
「おいおい、冗談きついぞ……姉上様」
「何がよ、
背後から腰に巻き付く
何かそこにあるのか。
「随分と行儀の悪い虫が出たようだな。俺のほうが先にお前のことを知ってたのによ……」
「ぐっ……ちょっと
後ろから襟を引っ張られ、喉が締まる。
「……お前が悪いんだからな。ちょっとくらい我慢しろよ」
何を、と思っていたら、
「えっ!?」と驚きに声を上げたのと同時、首筋に噛みつかれ――はしなかった。彼は「ぐっ」とくぐもった呻き声を漏らしたかと思ったら、ぐったりとして長牀にすべり落ちた。
「まったく、平和ボケしたかのう」
「ったく、油断も隙もあらへんわ」
「――っお、お父様!? それに、
振り返った先には、懐かしい顔があった。
――――――――――――――
ミステリ部分折り返しにきましたね。
お付き合いくださりありがとうございます!
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あと半分完走がんばります!
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