第9話 異世界、いいかも・・・?
とりあえず、当面の目標と行末が決まった。
一週間後、アンナはこの異世界のことと、自身に何が起きたかの手がかりを求めて、『王都ラティパック』を目指すこととなった。道中には強力なモンスターや盗賊などがうじゃうじゃいるそうだが、指折りの用心棒エウクセルが護衛についてくれるらしい。
またそれまでの間、家で世話を見てくれるどころか魔法の練習も付き合ってくれるという。待遇が手厚すぎて、もしかして転生チートスキルは「人たらし」とかなのでは? とも思ったが、単純に底抜けのお人好しなだけらしい。村人みんなが口を揃えてそう言っていたから、多分間違いない。
「魔法にはレベルがあってだね。0〜3までの四段階で区分けをされているんだよ」
レベル0 … 適性ゼロ。微塵も反応を見せない。才能なし。
レベル1 … ほんの僅かな程度から、小型モンスターを撃退できる程度まで。
日常で役立つ、最も人口の多いレベル。
レベル2 … 小型から大型まで、モンスターを倒せる程度。
魔法に秀でた者のレベル。
レベル3 … その属性においてできないことがほぼない。
国中を捜しても、20人といないほどの天才レベル。
曰く、このレベル分けには厳密な境界線は無いらしく、また区分けの幅がやたらに広すぎるらしい。特にレベル1は上澄みと底辺の差が雲泥ほどなのだとか。
ちなみに、エウクセルは火属性の魔法に優れているため、とりあえず火属性の魔法を色々と教えてもらいつつ鍛錬することとなった。
「まあそもそもLv.2以上の魔法使い手そのものがとても希少なんだけれどね。私が今まで出逢ってきた戦士たちは、その9割以上がLv.1だった」
それは“戦士”だからでは? とはいえ、どうやらこの世界において魔法は、誰もが使えるものである反面、その才覚には嫌というほどの格差があるらしい。そのせいか、レベル2以上というだけで世間からは一目置かれるのだとか。何だか学歴社会に似たものを感じる。やなかんじ。
「ただ、ここからが本題なんだけれどね」
ふと、エウクセルの穏やかな声色に突如影が差した。思わず魔法の練習中だった手を止め、彼の方を振り返る。
「アンナちゃん。キミは、四属性全てに何らかの反応があった。
これは、由々しき事態なんだ」
「由々しき・・・?」
きょとんとするアンナに、エウクセルは力強くうなづく。
「魔法は、基本的に一人一属性。どんなに魔法の才覚がない人間でも、必ずどれかしらの属性に適性があって、レベル1の魔法を持っている。
けれどそれは、あくまで一属性の話だ」
数日前の、この異世界に目覚めた日。プレーに笑われたアンナの四属性の魔法は、全てその属性に関わる現象が発現した。しかしこれは尋常ではなく、本来ならばどれか一つの属性にしか反応は現れないのだという。
「私は火属性Lv.2だが、他の属性は軒並みLv.0だ。
そしてLv.0の適性のない属性魔法は、普通は使おうとしても毛ほどの反応すら見せないんだよ」
エウクセルもまた、トラッツの村人故か火属性に秀でている。しかし、それ以外の属性の魔法は一切使えず、アンナが起こした手汗程度の水も、隙間風程度の風も、砂利程度の土も起こらないのだという。
「発現している時点で、四属性全てに適性があるということだ。
だがそんな人間、私は聞いたことがない・・・!」
・・・ん? あれっ、これもしかして褒められてる?
「私には火属性しか教えられないが、もしかしたらキミは、とてつもない魔法の才能を秘めているのかもしれないな・・・!」
武人故か、圧倒的な才能を前にして目を輝かせずにはいられないらしい。というよりも、これってもしかしてとっても凄いことなのでは?
「まさか、これこそが私のチート能力・・・?」
今はLv.1底辺のカスみたいな魔法しか使えないが、もしかして今後鍛えれば全属性オールLv.3とかも夢ではないのでは!? そう思うと、俄然期待と興奮とやる気がみなぎってきた。
異世界生活、やっぱりいいかも・・・!!
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