第6話 魔法とは?

「魔法も知らないのかい!?

 驚いた、そんなところまで記憶が飛んでしまっているのかい・・・」


 興味津々で魔法について訊くと、なぜだかプレーには哀れみの目を向けられてしまった。やめて、その目は普通に傷つくから。


 とはいえ知らないものは知らないし、何なら魔法なんて今この場で知りたいことNo.1だ。ここが異世界であることは確定事項だとして、とりあえず魔法がどんなものなのかは第一に知っておきたい。





「魔法には四つの属性があってね。それぞれ使える属性ってのは人によって違うんだよ」


 魔法には四属性−−火、水、風、土があり、どの属性を扱えるかは個人で適性があるという。そしてその適性は全て先天的に決まるもので、親の扱える属性がそのまま引き継がれることがほとんどなのだとか。


「ほとんどの人間は一人一属性だね。

 魔法使いみたいに魔法の才に特化した人間だと二属性使える人もいるそうだけど、まあそんな人アタシはこの目では見たことないね」


 両親がそれぞれ違う属性の魔法を扱えたとしても、子に受け継がれる魔法属性はそのどちらか片方になるのが一般的だという。魔法使いの家系のように、先天的に魔法に優れた血族であれば、父母両方の属性を受け継ぐこともあるそうだが、それでも二つが限度らしい。


「つまりプレーさんは火属性の魔法に適性があるってことですか?」


「そうさね。まあこの村は元々祭祀が盛んで、その度に火を扱うからね。

 住民のほぼ全員が火属性なのさ」


 住む環境や習慣によって、自然と魔法の属性は受け継がれていく。河や海沿いの村なら水属性、農耕の盛んな広い土地の村なら土属性の適性を持つ住民が多くなるのだ。


「いいなぁ、魔法。

 どうやったら出せるんですか?」


「どうやったらって・・・、そうだねぇ・・・。

 こう、念じる・・・、みたいな感じかねぇ」


 魔法は体内の魔力を元に放つもので、その魔力を明確に形にするイメージが肝要だ。例えば先ほどのプレーの魔法は、明確に指先に火を灯しその火を玉状にして薪に移す、といったイメージを浮かべて行ったのだという。


「イメージかぁ・・・。

 なるほどなるほど」


「試してみるのかい?

 それならこれを使いなよ」


 そう言って、プレーは使っていない料理用のボウルを一つ手渡した。


「ボウルの中に、それぞれの属性のイメージをするんだ。

 魔法属性は大抵そうやって適性を調べるらしいよ。旦那が前に言ってた」


 なるほど、火属性ならボウルの中に火が灯り、水属性ならボウルの中が水で満たされ、風属性ならボウルの中に小さな竜巻ができ、土属性ならボウルの中に砂が溜まるということか。なるほどなるほど。


「ちょ、どこにいくんだい!?」


「・・・ちょっと庭に。ええ、家の安全を考慮してのことですのでご心配なく」


 これは間違いなく異世界転生でよくある、チート能力に目覚める瞬間に違いない。転生した私にはきっととんでもなく強力な魔法が備わっていて、軽くやったつもりが家を丸ごと消し飛ばしてしまう、、、みたいなことになりかねない。


 困惑するプレーを尻目に、アンナは自信満々に庭へと繰り出た

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る