魔法飛び交うファンタジー!?
第5話 初めて見た!
今いるここが異世界と断ずるにはまだ早い。とはいえ、先ほどまでの不安と恐怖とは打って変わって、アンナの心の内はえも言われぬ興奮で溢れていた。
「もうこんな時間か。もうすぐ旦那が帰ってくる頃だし、ご飯の支度でもしようかね」
しかしそんなアンナとは裏腹に、プレーはごく平凡な日常として今この瞬間を過ごしていた。アンナが元気になったのを見届けたからか、おもむろに腰をあげ、台所へと向かう。
「手伝います!お世話になったばかりですし・・・」
「ありゃ、本当かい?
そいつぁ助かるね」
こう見えても毎日自炊をして生活していたのだ。料理の腕にはそれなりの自信がある。とはいえ、ここはプレーの家なので、出過ぎた真似はしないようにせねば。助けてもらった手前、せめて足を引っ張るようなことだけはしたくない。
「うん、それじゃかまどに火を点けてくれるかい?」
二つ返事でかまどへ向かう。かまどそのものは日本の伝統的なものとほとんど変わらないようだった。むしろ石造りであること以外はほとんど日本の田舎でよく見られる家の構造そのもので、あまり異世界感はなかった。
「・・・えっと、チャッカマンとかはどこですか?」
薪ならかまどのすぐそばに積んであった。しかし、肝心の火種が無い。ライターでもチャッカマンでもマッチでも、何らか火をつける道具が欲しい。
「ちゃっかま・・・?
よくわからんこと言ってないで、早く火を点けておくれよ」
「いや、だから火種がないと・・・
マッチとかでもいいので、どこにありますか?」
何かまずいことでも言っただろうか。アンナの問いに、プレーはきょとんとして彼女を見つめた。そしてその直後、ため息混じりに彼女を押しのけ、かまどの前に立った。
「はぁ、全く。火もつけられないのかいあんたは」
そう言った次の瞬間だった。
プレーの指先がほのかに輝いたかと思えば、瞬時に火花を散らして火が灯り、あっという間に薪に点火してしまったのだ。
「えっ・・・、えぇ?」
あまりの衝撃に、思わず言葉を詰まらせ立ち尽くしてしまった。たった今、プレーは何の火種も道具も使わずに、文字通り爪に火を灯し薪に点火したのだ。
「何をそんなあんぐりしてんだいみっともない」
さも当然のように持ち場に戻るプレー。今のはマジックだったのか?
「あの・・・、今どうやって火を・・・?」
驚きながらも、わずかに瞳に光を宿しつつ尋ねる。
「どうやってって・・・、魔法に決まってるだろう?」
その答えに、アンナは思わず両拳を天高く突き上げた。
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