第24話 見知らぬ先輩達
(ここが3年生のフロア……緊張する…)
夏休みが明け、いつも通りの日常が戻ってきた。生徒会の仕事にも慣れてきたわたしは仕事を任されることも増え、今も柊会長に話を聞くために3年生の教室がある階へと足を運んでいた。
(……あ、いた!)
教室まで行くのが怖くて偶然見つからないものかと目を光らせているとなにやら教材らしき物を持った柊会長が現れた。
(よし!このまま近づいて……)
見知った顔に安心したわたしは後ろから抱きついて驚かしてやろうとしたのだが……
「ひ、い、ら、ぎ、さーーーん!」
「ちょ……抱きつかないでください!」
(誰ぇ!?)
柊会長と同じ教室から元気そうな女子生徒が現れ、そのまま柊会長に抱きついてしまった。
「ねぇねぇ勉強教えてお願い!中間ヤバくてさぁ!」
「教えます!教えますから離れて!」
話してる内容まではハッキリと聞こえないがすごく仲が良さそうに見える。というか……
「お、早川ちゃんじゃん。なにしてんの?」
呆然とふたりを眺めていると後ろから桜木先輩が声をかけてくれた。わたしは桜木先輩に思ったことを口にした。
「あの人……」
「ん?あー榊ね。最近よく柊に絡んでるよ」
「わたしとキャラ被ってませんか!?」
「気にするところそこ??」
榊先輩はわたしよりは身長も高いし、体格もしっかりしてる。特に足回りが凄い。なんというか凄い。スポーツマンって感じだ。
「榊の事を一応説明しとくと、あの子は陸部のエース様だよ。といっても引退済みだけどね」
「わたしよりすごい……」
「いや比べるとこじゃないと思うけど……まぁ早川ちゃんが気にしてるようなことはないよ」
「何を根拠に……お?」
桜木先輩と廊下のど真ん中でイチャつくふたりを眺めていると、同じ教室からさらに女子生徒が出てきた。
「こら優依。会長さんに迷惑かけないの」
「だってぇ……頼れるの柊さんしかいなくてぇ……」
「あの……渡辺さん…はやく引き剥がしてください…」
「分かってます。ほら離れろバカ」
「柊さんいい匂いしてるから堪能してたのにぃ…」
「は?」
出てきたその生徒は3年生とは思えないほど小柄だった。だけど榊先輩にガツガツと強く当たっていて、力関係が見てとれる。
「あの人は?」
「
「へー……」
なるほど榊先輩には彼女がいたのか。なら柊会長を盗られる心配は…………
「ん?今なんて言いました?」
「だから、あのふたりは付き合ってるってこと」
「へ?」
「えぇぇぇぇえぇ!?」
あまりの衝撃的な事実におもいっきり叫んでしまい、3年生のフロア中に声を響かせてしまった。
「ビックリしたなぁ……そんな驚く?」
「いや驚きますよ!?」
わたしが言うのもなんだけどそんな当たり前みたいにカミングアウトすることじゃないはずだ。
「3年の中だと有名な話でね。2年の時にひと悶着あって――」
「早川さん…声が大きすぎますよ」
さっきの叫びのせいで流石に気づかれたのか柊会長がいつの間にか目の前まで来ていた。
「あ、ごめんなさい……でもビックリしちゃって」
「……何に?」
「そりゃ――」
「君って1年生!?生徒会!?あ、もしかして早川ちゃん!?かわいい!ふわふわガールだぁ!」
「へ!?あ、はい……早川です…」
ついさっきまで遠くにいたはずだった榊先輩がわたしを見るやいなや高速で突っ込んできて勢いのまま手を握られた。
「いやぁ文化祭の時に大活躍だったって聞いたよ!カッコいいね!!すごい!!!」
「それほどでも……えへへ」
榊先輩から伝わってくる圧倒的な元気の暴力。距離感の詰め方が明らかにおかしい。でも良い人そうなのは確かだ。
「……榊さん?いつまで手を握ってらっしゃるので?」
「え?ダメ?」
「駄目に決まってるでしょ!初対面の1年生相手に貴女という人は……!」
「会長さんの言う通りだよ。いいからとっとと離しなバカ」
「ぐぇ…わたしのふわふわガールがぁ……」
後から追い付いてきた渡辺先輩はわたしを睨み付けた後、榊先輩の首根っこを掴んでそのまま立ち去っていった。
「……嵐みたいな先輩方ですね」
「全くです。ところで早川さん。どうしてここに?」
「あ、そうだった忘れてた……実はですね――」
その後、ようやく当初の目的だった仕事の話をすることが出来たのだった。
「………………」
その間ずっと背後から視線を感じていた気がするが…とりあえずは気のせいだと思い込むことにしたのだった。
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