第22話 夏のお仕事

「おっはようございまーす!」


 夏休みの中頃。今日は自習ではなく仕事ということで直々に呼び出された。


「あ、おはよう栞さん」


 生徒会室には体操着に着替えた瞳ちゃんが居て、柊会長の姿はなかった。


「あれ?会長は?」


「少し前に先生から呼ばれて…すぐ戻ってくるとは言ってたけど」


「ふむふむなるほど……んじゃ着替えて待ってますか」


 手早く制服を脱ぎ、体操着に着替える。


「ふぃー……にしても体操着ってことは外での仕事なのかなぁ?」


「多分体育祭関連のお仕事じゃないかな?」


「なるほどそれか!」


 そう。夏休みが明けた次のイベントは体育祭。恐らくはそれに備えた何かなのだろう。


 コンコン

「開けても大丈夫ですか?」


 瞳ちゃんと雑談をしていると扉がノックされ、柊会長の声が聞こえてきた。


「いいーですよー」


「……おはようございます」


「おはようございます!」


 なにやら資料を持っている柊会長と挨拶を交わし、そのままその資料を手渡された。


「はいこれ。持っててください」


「はーい!………なんですかこれ?」


「体育祭で使う備品のチェックリストです。今から向かいますよ」


「おぉ!生徒会っぽい!」


 わたしがひとりで盛り上がっていると瞳ちゃんが不思議そうに尋ねた。


「あの…どうして私達しかいないんですか?」


 そういえばそうだ。集合時間からはそこそこ経っているのに先輩達が来る気配がない。


「呼んでいないからですね」


「えぇ!?」


「……どうせ来ませんし、それならばお2人に仕事を覚えてもらった方が早いかと」


「な、なるほど……」


 柊会長の表情は呆れつつも若干開き直っていた。昔から日常茶飯事なのだろう。


「だったら!わたし頑張ります!バンバン頼ってください!」


「……よろしくおねがいします」


「はい!!」


「わ、私も!精一杯お手伝いします!」


「ありがとう…本当に助かります」


 柊会長は微笑みながら自分の席に戻っていき、鞄を漁りだした。


「場所は運動場の端っこにある倉庫です。鍵をお渡ししますので先に行っててください」


 鞄の中から体操着を取り出しながらあれこれと説明している。


 そういえばまだ制服だ。



 …………つまり?



「……栞さん?どうしたの?」


 瞳ちゃんは既に立ち上がって向かう気満々だったがわたしはそれどころではなかった。


「ごめん瞳ちゃん先に行ってていいよ」


「え?」


「何言ってるんですか早川さんも………なんですかその目は」


「お気になさらず」


「気にするに決まってるじゃないですか…まさか着替えを見ようとか思ってないですよね?」


「はい。思ってます」


「ダメです!早く出てってください!」


 制服を脱ぎかけていた柊会長はその手を止めてしまった。


「いいじゃないですか~女の子同士ですし~」


「そうですけど……あなたはなんかこう…違うじゃないですか!」


「このくらいで気にしてたら将来一緒にお風呂に入れませんよ?」


「入りません!どういう想定ですか!」



 怒ってしまった柊会長に生徒会室から摘まみ出され、仕方なく瞳ちゃんと倉庫へと向かうことにした。



 その後、特に大きなトラブルもなく仕事は進んで行った。どうにかして倉庫の中に閉じ込められないかと模索していたが柊会長はずっと外におり、そんな機会が来ることはなかったのだった。

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