第21話 夢見る少女達
大学が夏休みに入り、家でのんびりとしていると桜木さんからのメッセージが届いた。
『話したいことがある』
そのメッセージを見た私は桜木さんに確認をとり、別の友達へと連絡を入れた。その後、栞にも連絡し、家に招き入れることを許可してもらった。
後日。
「えー…本日はお日柄も良く……」
「今更前置きとかいらないから。早く本題に入ってよ」
「そうだよそうだよ!」
初めて家族以外を家に上げた。この場にいるのはもちろん桜木さん。そしてもう1人……
「わたしまで呼ばれたってことは……ついになの!?ついになんだね!?」
高校時代のテンションと変わらず声が大きなこの女性の名前は
「私は呼んでないんだけど……」
今回の話題には必要不可欠な存在だろうと思い、連絡しておいた。本当はもう1人呼んでいたのだが、都合が合わなかったらしい。
「……まぁ丁度良いや。紗奈にどうしても聞きたいことがあったの」
「これ以上らしくない質問だったら追い出すからね」
「分かってる………優依も教えて欲しい」
「わたしは何でも答えるよ!」
私達ふたりに確認を取ると、桜木さんは覚悟を決めて話を始めた。
「ぶっちゃけさ………女の子と付き合うってどうなの?」
「わりとセンシティブな内容!」
「この期に及んで……いや…悩むのは分かるけどさ」
真剣な桜木さんから問われた内容はそこそこ重めの話だった。とはいっても私も悩んだ話ではある。やっぱり榊さんを呼んでおいて正解だったようだ。
「答えにくいのは分かってる……でもさ、考えちゃうじゃん?親に説明する時とか…子どもとか……」
私達と違って桜木さんは大人になりすぎた。既に大学3年生。将来の事を考えていく時期だ。もう甘い夢なんて見ている場合ではない。
「わたしは……親にはすっごい反対されたね!友達のままでいいだろ~。きっと後悔するぞ~。って!」
「………だよね」
「まぁそれで卒業したら家を飛び出したわけですが……後悔はしてないよ!」
「だって今めっっっちゃ幸せだもん!好きな人と居れて後悔なんてない!性別なんて関係ないんだなって思わされた!」
「かっこいいね優依は……」
榊さんの力強い宣言に桜木さんは目線を反らした。
………恐らく桜木さんは夢を語って欲しいわけではないようだ。
それに気付いた私は暗めの口調で桜木さんの質問に答えた。
「私の親は特に反対なんてしなかった。兄もいるし、もともとあまり私に興味のある人達じゃなかったからね」
「でもね、私も最近思うことはあるよ。子どもを作れないっていうのは少し寂しいなって」
「……うん」
「普通とは違う人生を歩むことになる。よく自分で考えて欲しい。かわいそうだからって告白を受けたらそれはきっと後悔するから」
「…………ぅん」
榊さんもそうだが、私達は好かれた側だ。告白され、受ける立場にあった。榊さんは真っ直ぐ好意を受け止められる人だったが、私は違う。沢山悩んで、悩んだ末に出した結論だった。
「……とはいってもだよ」
落ち込んでしまった桜木さんを励ますように明るく語りかける。
「私も今はすっっっごい幸せ。この家を見て貰えば分かると思うけど……明らかに私の趣味じゃなさそうな物もあるでしょ?」
「……栞と一緒に居られてるって実感できて、一緒にご飯食べて、一緒に寝て……毎日がとにかく幸せなの」
悲しそうな桜木さんにめいっぱいの夢を語る。夢でもいいのだ。壁は沢山あるが、それを乗り越えるだけの気持ちがあればその先にはもっと沢山の幸せがある。
「…………私、頑張るよ」
「うん。がんばれ」
まだ少し悩んでいる桜木さんはそれでも前に進もうと決心したようだった。そして私達の会話を邪魔せずに聞いていた榊さんが涙を流していた。
「いい話だね…………ふたりともカッコいい……ぐすっ…」
「また泣いてる……はいティッシュ」
「ありがと…………」
その後、しばらくは世間話で盛り上がり、栞が帰ってくる前に解散となった。
そして後日。
桜木さんから告白したという報告が私達の元に届いたのだった。
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