第10話 真っ直ぐすぎる信念

 時は過ぎ、いよいよ文化祭を明後日に迎えた校内は文化祭ムードになっていた。学校の至るところでみんなが切磋琢磨している。1年生は合唱コンクールの決勝をするのだが…わたしたちのクラスは既に負けちゃったので本番は無しです。やったね。


 そんな校内をスルスルっと素通りしながらいつものように生徒会室へとたどり着く。


「失礼します」


 普段より声のボリュームを抑えて入室する。理由としては…


「ですから、そんなものは認められません」


「いいじゃん!このくらい大丈夫だって!」


 とあるクラスの実行委員が毎日のように話をしにきているからだ。話をしている相手は当然柊会長。他のメンバーもいるけど一切の口出しはしていない。


「明らかに短すぎます。もしもの際はどう責任をとるつもりなのですか?」


「でも折角用意したのに着ないのなんて勿体ないじゃん!」


「それは貴女方が勝手に発注したのでしょ?誰が許可を出したのか知りませんが……」


 そうは言いつつも柊会長の目は1人の生徒会メンバーに向けられている。その目を向けられた人は視線を合わせないようにしている。


「ともかく。もし本番でその格好で営業していたのであれば、即刻中止させますので」


「はぁ!?アンタに何の権利があるわけ!?」


「……生徒を守るためです」


「守るって………そんな変なことする奴が来るわけないでしょ!そんなのがいたら受付で先生達が止めてくれるし!」


「そうでしょうが全てを止めてくれるとも限りません。もしもということがあります」


「そのもしもで私達の青春を潰すつもりなんだ!アンタが友達居なくて嫉妬してるだけでしょ!!偉いからってふんぞり返って…正論だけ言ってればいいとか思わないでよ!」


「ですから………」


「もういい。アンタの許可なんていらない。アンタに味方がいるとか思わないことね」


 ヒートアップしていた議論はそこで終わり、その実行委員は苛立ちながらも生徒会室から出ていった。


「………」


 柊会長はとても複雑そうな顔をしており、悩んでいるのだろうというのが見てとれる。それに他の生徒会のメンバーの視線も痛い。なんでそんな目で彼女を見るのか、わたしには分からなかった。


「…………少し頭を冷やしてきます」


 柊会長はそう呟くと、生徒会室から出ていき、フラフラとどこかへ向かっていた。

 居なくなったのを見計らってか漸く他のメンバーが話し始めた。


「別にスカートくらいねぇ?」

「固すぎるよね~」

「でもでも最後の友達いないってやつ効いてたくない?w」



 楽しそうに柊会長の事を話している。

 どうして?あの人は悪いことは言ってないはず。生徒会っていうのは正しくあるために存在してるんじゃないの?



 わたしは彼女の事を嘲笑っているような生徒会室の空気に耐えられず、彼女の後を追うように生徒会室から飛び出した。

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