第9話 懐かしい青春

「……栞、なに見てるの?」


 とある日。食事も済ませ、お風呂から上がると栞がソファに座って何かを見ていた。どこか見覚えのあるような気もする。


「これ?パンフレットだよパンフレット」


「なんの?この前言ってた映画の?」


「違いますぅ。我らが母校の文化祭のパンフレットですぅ」


「文化祭………あぁそんな時期か」


 冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注ぎ、栞の隣に座る。確かによくよく見てみればうちの高校の名前がのっている。すごく懐かしい。私が隣から覗き込んでいると栞はなにか思い付いたようで……


「……行っちゃうか!」


「行ってらっしゃい」


「ふたりでだよ!!」


「え?」


 そう言い出した栞の顔はとってもキラキラしていて、「あ、これはもう無理だな」と私に思わせるには充分だった。

 とは思いつつも一応抵抗はしてみる。


「私が行っても仕方なくない?後輩達は私のことなんて知らないし……みんな栞だけと話したいだろうしさ」


「そんなことないよぉ!むしろみんな紗奈ちゃんに会いたがってるって!」


「なにを根拠に……」


「わたしが毎日惚気てたからね!」


「余計に行きたくない……」


 栞と付き合うことになり、私が高校を卒業した後も、栞は生徒会に居続けた。それどころかいつの間にか生徒会長になっていた。立派になっちゃって。


「というわけで行こう!近藤先生も会いたがってたよ!お子さん産まれてたんだって!もう2歳!多分来るよ!」


「………しょうがないなぁ」


 いつもよりも凄まじい熱量で押してくる栞に耐えられず、渋々今週末の文化祭に行くことが決まったのでした。

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