第8話 わたしの初仕事

「早川さん」


「はいなんですか!」


 いつものように放課後に生徒会室でのんびりくつろいでいると、柊会長から声をかけられた。


「仕事、行きますよ」


「……はい!!」


 仮入部を終えたわたしにとっては初のお仕事。柊会長の後を追うようにテコテコと歩き、職員室に向かった。


「失礼します。近藤先生はいらっしゃいますか?」


 職員室で沢山の先生達を前にしても堂々としたその立ち振舞いにわたしはまたドキドキしてしまう。


「どうした柊?」


 すぐに呼ばれた先生らしき男の人がやってきて、柊会長となにやら話を始めた。


「例年通りでしたら―――」


「ふむ…だったら――――」



 正直何を話しているのかさっぱりだ。難しいのもあるし、柊会長の横顔が良すぎて話に集中出来ない。


「分かりました。では……早川さん?聞いてましたか?」


「はぇ!?はい!ばっちりです!」


「……私、嘘つきは嫌いですよ」


「聞いてませんでした!………あ」


 反射的に正直に話してしまい、柊会長は頭を抱え、先生は必死に笑いを堪えていた。


「簡単に説明するけど…文化祭の受付を生徒会の1年生に任せられないかって話よ」


「文化祭………文化祭!?」


「そこまで聞いてなかったとは……」


 またまた頭を抱えた柊先輩の様子に流石に我慢できなくなった先生が吹き出してしまった。


「柊wおもしろいの捕まえてきたなww」


「捕まえた。というのは不適切ですよ近藤先生」


「わるいwでも柊に随分と懐いてるようでなww」


「はい!捕まえられました!」


「こら変なこと言わない!」


「あっはっはww」


 その後、柊会長に文化祭に関するのプリントをコピーしてくるように命じられ、たまたまいた茜先生にコピー機の使い方を教えて貰いながら四苦八苦することになった。





「……ホントに良い子が入ってくれたな」


 コピー機に苦戦している早川さんを眺めながら近藤先生は呟く。近藤先生は2年生の頃の担任で、仕事でも度々会うのでそれなりに交流があった。


「そうですね…少しうるさくはなりましたが」


「……柊も。良い顔してる」


「奥さんに言いつけますよ」


「いやいやそういう意味じゃねぇけど!?」


「冗談ですよ。……ありがとうございます」


 ふたりで世間話をしていると漸くコピーが終わったのか、ニコニコした顔でこちらに歩いてくる早川さんに「お疲れさまです」となるべく優しく声をかけ、そのままふたりで生徒会室へと戻るのだった。

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