第7話 n回目の告白

「ねぇ紗奈ちゃん。好きだよ」


「……私も…………ちゅ……」


 いつもよりも積極的な栞から誘われ、一緒にお風呂に入る。流石にふたりだと狭いから滅多に入ることはない。だけど今日は特別……らしい。


「すき……すき…………だいすき…」


「ん……ゃ………なに今日は…」


 湯船に浸かりながらゆっくりじっくりとキスをする。栞にしては珍しく、私を確かめるかのようにキスをしてくる。


「……覚えてないの?」


「なにが……ゅ…………生徒会に入った日とか?」


「惜しい………ん……ヒントは…『好き』だよ」


「えぇ…………もぉ……ねちっこい…」


 暖かいお湯につかりながら溶けそうなほど熱いキスを続ける。どうやら答えが分かるまでやめてくれないらしい。


「なんだろ………初仕事とか……?」


「ちがいますぅ………ちゅ……もっと大事なことだよ……」


「分かんないってば………んぅ…」


 一向に分かる気配のない私を見て栞は少し怒りつつも、キスをやめ、私の耳元で囁いてきた。


「柊会長……」


「へ………」


 その声色はまるで私と栞があったばかりの頃のような、どこかよそよそしい声色。


「好きです……大好きです…」


「………その日かぁ」


「思い出してくれましたか?」


「……えぇばっちり」


 栞につられて私の口調も昔のように戻ってしまう。なんだか懐かしい。あの頃はまさかこうなるとは思っていなかったけど。


 私の耳元から離れた栞は、今度は両手を広げて私を待ち構えていた。


「お詫び。してくれますよね?」


「……仕方ないですね」


 そのまま栞の柔らかい体を抱き締め、さっきのお返しといわんばかりに耳元で囁く。


「早川さん…好きですよ………大好きです」


「ほぇ………」


「ありがとうございます……私はあなたに会えて…本当に幸せです……」


「……これやばぁ」


「…………どうする?このままする?」


「流石にのぼせそうだからやめとこ……」


「そだね…」



 その後、お風呂を上がり、髪の毛も乾かさずにふたりで愛し合った。


 あの日は私にとっても大事な日だった。あの日から私は退屈だった日常が全部かけがえのない思い出になっていったのだから。


 だからこそ、すぐに答えてあげられなかったお詫びも込めて、お互いに休むことなくひたすらに体を重ねたのだった。





 翌日。



「紗奈ちゃん!わたしのスマホどこ!」


「分かんない!ソファじゃないの!」


「ないんだよぉ!一緒に探してよぉ!」


「ちょっと待って髪まとまんないから!」



 ふたり揃って盛大に寝坊しましたとさ。

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