第6話 はじめての告白
「失礼します!」
生徒会に仮入部してから一週間。授業の終わった放課後に、いつものように元気よく生徒会室の扉を開ける。
「今日も元気だね」
「それが取り柄なので!」
生徒会室には相変わらず柊先輩ひとりしかいなかった。他の人達は何をしているのだろうか。
「だとしてもまだ仕事はないよ」
「柊先輩を眺めるっていう仕事があります!」
「それは結構。そして柊会長、ね」
柊先ぱ………柊会長はわたしと会話しながらも手を休めることなく動かしていた。
わたしもこれ以上彼女の邪魔をしないように鞄から課題を取り出して向き合う。高校に入ってからものすごく難しくなった問題達とにらめっこを始めた。
特に会話をすることもなく、ふたりだけの時間が過ぎていく。最初の頃はなんとか話をしようとチャンスを伺っていたが仕事の邪魔をするだけだというのに気づいてやめた。今となってはふたりでいられるというだけで幸せなのだ。
「……ねぇ」
一時間ほど過ぎた頃、初めて柊会長から話しかけられた。
「は、はい!」
わたしはその事がとても嬉しくて、思わず大きな声で返事をしてしまった。彼女の驚いた顔が目に入り、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしてしまう。
柊会長は驚きながらもクスッと笑い、優しい声色で尋ねてきた。
「なんであなたは私と居られるの?」
「へ?」
そんな突拍子もない質問に変な声で返事してしまう。質問の意図が理解できないわたしに柊会長は続けて話を始めた。
「見ての通りです。他のメンバーは私が厳しく接したせいで大事な会議でもない限りは生徒会室にはこないようになった」
「……あなたにだって初対面の時にあんなに上から目線で怒ってしまったし。それに今だってろくに会話をするわけでもなく、ひたすら仕事だけをする始末」
そう淡々と語る柊会長はとても寂しそうな目をしていた。いつもの力強い瞳じゃなくて、弱々しくて、小さな女の子みたいな目。
「だからその…なんでなのかなって」
わたしはそんな女の子らしい彼女の仕草を見て我慢できなくなり、席を立って彼女の元に近寄った。震えている手を取り、力強く宣言する。
「会長は……会長は偉いと思います!」
「え………いや…」
「同じ年頃の人に厳しく出来るなんてすごいです!かっこいいです!」
「…………ちょ」
柊会長は顔を真っ赤にしてわたしの手を振りほどこうとするが、わたしはそれを逃がすまいと両手でおもいっきり握る。
「わたし…初めて会った時から素敵な人だなって思ってたんです!」
「やめ……わかったから…」
「いえまだです!まだまだ伝え足りません!」
どんどん顔が真っ赤になっていく柊会長にグッと顔を近づけ、自分の想いを告げる。
「好きです!大好きです!」
「す……!?」
「本気です!だからこうして生徒会にだって――」
「……もうやめて!!」
柊会長の口から飛び出た悲痛な叫びにわたしは我に返り、すぐに手を離して頭を下げた。
「あの…すいません……いきなり…」
「………こっちこそ…ごめん…」
生徒会室に重い空気が流れる。わたしは自分がやってしまった過ちに気づき、顔をあげられずにいた。
そんなわたしの姿を見て気を遣ってくれたのか柊会長は頭を撫でてくれた。
「………ありがとね。あなたのおかげでちょっとは自信持てた」
わたしはその言葉になにも返すことは出来ず、ただ涙を堪えるしかなかった。
「それとその……嬉しかった」
「………へ?」
わたしの頭を撫でていた手が止まり、柊会長の声も少し震えていた。
「だから…告白……嬉しかった…」
「……じゃあ!!!」
「でもそれとこれとは別!私にそんな趣味はありません!」
「そんなぁ!?」
わたしの最初の告白は盛大にフラれてしまった。顔を上げて彼女の顔を見るとまだまだ顔は赤いままだったが、いつもみたいなカッコいい顔つきになっていた。
「……これからもよろしくね」
「はい!大好きです!」
「だからぁ!!」
流れるように2度目の告白を行い、またまた盛大にフラれてしまうのだった。
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