第5話 あなたがいる日常

「ただいま」


 返ってくること無いとは分かっていても、ついつい口に出してしまう。たったの2ヶ月で彼女がいる生活は私の人生の一部になったようだ。


 彼女が帰ってくるまで多少時間がある。まずお風呂を沸かし、何があるかと冷蔵庫の中身を見てみる。とはいっても私は彼女みたいに料理が得意というわけではない。強いていうならオムライスが作れるくらいだ。


 というわけでオムライスを作るために卵を取り、その他色々を台所に運ぶ。台所には色んな調味料も置いてあるが私には何が何だかさっぱりなので使わないようにしてる。



 そうして準備を整えているとスマホに通知が届いた。


『今から帰るよー』


 そのメッセージにどこか安心しつつ、『気をつけてね』と返し、オムライス作りを再開した。




 しばらくすると扉のカギを開ける音が聞こえてくる。一旦火を止め、出迎えるために玄関に向かう。


「たっだいまー」


「おかえり」


「楽しかったぁ!」


「そう。それは良かった」


 栞の手には色んな買い物袋があり、沢山楽しんで来たんだろうというのが見て分かる。


「お風呂沸いてるから先に入ってくれば?」


「そうするー」


 そのまま私は台所へと戻り、オムライスの仕上げに入る。栞はドタバタしながらお風呂に入り、ちょうど出来上がる頃にお風呂から出てきた。


「………服着なさい」


「え……あ、そうだった………」


 実家暮らしのクセらしいのだが栞はたまにパジャマを着ずにリビングに出てくる。正直目のやり場に困るからやめてほしい。


 その後、いつものパジャマに着替えてきた栞と食卓を囲む。「美味しい!!」と笑顔で言ってくれる栞に嬉しく思いながらも明らかにいつもと違う彼女の様子に視線が吸い込まれる。


「あのさ栞。ブラ着けないの?」


「………今日はいいかなぁって」


 少しダボッとしているパジャマだからだろうか、胸元がお留守になっている。


 私が見ていることに気づいた栞は、オムライスを食べ終わると、ニヤニヤしながら私の隣に座ってきた。


「実は……下も履いてないんだけど…」


「まだ早いってば」


「えーいいじゃーん」


「……歯磨きしてからね」


「やった」








「あ、そういえば!」


「……なに急に」


 ふたりで抱き合ってイチャイチャしてると急に栞が寝室を飛び出し、すぐに戻ってきた。


「はいプリン!」


「それ今?」


「なんとなく!別腹じゃん!」


「そういうことじゃなくて……まぁいいか」



 お互いに服も着ておらず、この部屋には机もない。というのに栞は私にプリンとスプーンを渡すとそのまま隣に座って食べ始めた。


「溢さないでよ」


「大丈夫大丈夫~」



 とはいいつつ早速溢していた栞を見て呆れつつ、私もこのちょっとした悪いことを楽しむために栞が買ってきてくれたプリンを食べ始めるのだった。

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