第2話 わたしの好きな人
春。それは出会いの季節……なんて言うけどわたしにはピンとこなかった。
確かに新しい学校や新しいクラス。新しい部活とか色んな新しいがあるけど、どれもこれもわたしには退屈なものばかりだった。
高校生になって1ヶ月。高校生にもなれば出会いがあるかと思っていたけど、やっぱり期待していたような新しいは無かった。
また何気ない日常を過ごしていくのだろうと、退屈していた。
貴女と出会うまでは。
「マッキー早く!急いで!」
「待って待って上履き脱げちゃったから!」
昼休み。
同じクラスの友達と購買に急ぐ。いつも売り切れているお昼限定パンを今日こそは手に入れようと廊下を走る。
「もーーおいてくよー」
「待ってってば……って危ない!」
「へ?ちょわっ!?」
友達の方を振り返りながら走っていたわたしは階段付近の曲がり角から出てきた女子生徒とぶつかってしまった。
「いったた………あ、すいません!怪我とかしてないですか!?」
「私は平気……そっちこそ大丈夫?」
尻餅をついているわたしとは対称的に、凛とした立ち姿をしたその女子生徒はわたしに手を差しのべてくれた。
「ありがとう…ございます……」
「どういたしまして」
女子生徒の手をとり、立ち上がった後、失礼だとは分かりつつもまじまじと眺めてしまった。
髪は綺麗な黒で短い。どこか中性的な顔つきをしていて、身長もわたしより少し大きい。スラッとしていて、モデルさんみたい。
胸のリボンの色から違う学年……つまり先輩であることが分かり、わたしは慌てて頭を下げる。
「あ、先輩……ごめんなさい!わたし急いでて……その…」
「反省しているなら良し。でも急いでいるからといって廊下は走っちゃダメだって教わらなかったの?」
「はい……」
どうやら厳しい人らしく、しっかりと怒られてしまった。でもそんな最中でもわたしは彼女から目をそらさなかった。
そらしたくなかった。
「………なんでそんな見てくるの?」
ずっと見つめていると流石に気づいたのか怪訝な顔をされてしまった。
「あ、ごめんなさい……つい…」
「はぁ……反省してるのかしてないのか…」
「まぁいいわ。今後は気を付けてね」
「はい!もう走りません!」
「……そう」
その人は少し呆れつつもペコリと頭を下げ、職員室のある方へと向かっていった。
「もー、ちゃんと前見ないから……もしかしたら目をつけられたんじゃない?」
「??どゆこと?」
離れたところで見ていた友達がわたしに近づいてきて気になる発言をした。
「はぁ?あの人が誰だか知らないの?」
「え、逆に知ってるの?」
「知ってるもなにも……部活紹介の時に話してたじゃん」
「あー…寝てた!」
「あきれた…」
友達は頭を抱えつつも先程の女子生徒について教えてくれた。
「あの人、生徒会長らしいよ。名前はなんだっかな。たしか
「生徒会長!?あの人が!?」
「マジで知らなかったのか…うちの部活の先輩曰く凄い厳しいらしくてさ、アンタも結構怒られたでしょ?つまりそういう人なの」
「………そう…なんだ…………」
「だから今度から気を付けとかないと……っておーい?聞いてる?おーーーい」
その日はもう他のことなんて手につかなった。
結局パンは買いそびれたし、授業中でも物思いに耽ってばかり。
これがわたし達の出会い。
そして
ようやく訪れたわたしの春。
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