溶かされて。憧れて。ふたりで共に。
@Amane_18
私達の出会い
第1話 私の恋人
「はぁ…………」
疲れた足取りで帰り道を歩く。
提出するレポートに手間取ってしまい、最寄りの駅に着く頃には21時を回っていた。
マンションの自動ドアを抜け、エレベーターに乗り、自宅の前までたどり着く。
家の鍵を探そうと鞄を漁っていると、私よりも先に家の中の住人が内側からカギを開け、姿を現した。
「おかえり」
「……ただいま」
髪は明るい茶色で、性格は明るくて素直。
ピンクのパジャマ姿に丸い眼鏡。完全にリラックスモードになっている私の恋人がいた。
彼女の名前は
私の2つ年下で、私にとっては高校の時の部活の後輩にあたる。
「おつかれー。3年生は忙しそうだね」
玄関で私の事を待ってくれている栞はお風呂上がりなのかとてもポワポワしていていい匂いがする。
「…………」
「ん?……あーいい匂いするでしょ?さっきお風呂入ったんだ」
「………………」
「……もぉしょうがないなぁ」
玄関で靴も脱がずに突っ立っている私を見て栞も察してくれたのか、より近くに寄ってきてくれた。
「はいぎゅ~……」
「………あったかい」
栞と玄関で抱き合いながらお互いに暖めあう。
「どうする?お風呂が先?」
「んー……栞が先かも…」
「あらずいぶんお疲れみたいだね…まだ沸いてると思うから入ってきなよ」
「わかった…」
私のアプローチは軽く流されそのままお風呂に連行されてしまった。
「熱くないですか~?」
「気持ちいいです~」
お風呂上がりにドライヤーで髪を乾かしてもらう。いつもなら自分でするが今日は違う。
最近私が忙しかったのもあってあまりゆっくり過ごせていなかった。だからこそふたりそろって明日が休みである今日はめいっぱいお互いの成分を補給しようと決めていたのだ。
その後、栞が用意してくれていたパスタを食べ、歯磨きまでしてもらうと、栞がマッサージを提案してきたので「お願いします」と即答した。
「どうですかお客様?」
「さい…っこお………」
「痛かったら言ってくださいね」
「ん……」
ベッドにうつ伏せになり、その上に栞が乗っかってマッサージをしてくれる。特段上手いというわけではないのだろうが、それでも恋人にしてもらっているという多幸感だけで体中の疲労がとれていく。
「……っふぅ………ぁ…」
「…………っえい」
「ゃ……そこもマッサージするんですか?」
「リンパがですね~溜まりますので~」
「………分かりっ…ました…」
マッサージが終わる頃には私達ふたりはぐったりと疲れてしまい、ベッドで横になっていた。
布団の中で他愛もない話をしていると私のまぶたが重くなってくる。疲労と幸せで体はもうおやすみモードらしい。
そんな私に気づいたのか栞は微笑みながら囁いてくれた。
「いいよ…今日は寝よっか」
「でも………わたしはまだ…しおりになにも…」
「いいんだってば。こうして過ごせてるだけで幸せいっぱいなんだよ?」
「………でも…」
「そんなにわたしを幸せにしたいなら明日はわたしのわがまま聞いてくれる?」
「ぅん………いいよ……」
「やったぁ…じゃあおやすみ。大好きだよ」
「わたしも………ゅ…」
「ん…………ずるいなぁ」
わたしの唇にキスをするとわたしの恋人はそのまま眠りについた。いつもよりも素直で、溶けそうになっている彼女にわたしはどうしようもない愛おしさを感じてしまう。
「ほんとに…幸せなんだよ」
彼女は昔に比べたら本当に優しくなった。
高校生の頃なんてずっとピリピリしてて、学校中の皆から怖がられてた。
でも……
「せーーんぱーーい!」
「やめなさい。こらちょ………!」
そんな貴女が私は大好きだったんだ。
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