第11話 上杉防衛戦 前夜

「上杉憲政殿に付いてはあなた方の身が危のうござる。それでです。いっその事、我が北条家に付いてあなたたちの素晴らしい知恵を貸して頂けませんか?」


ほとんどの憲政方の武将はこの言葉に踊された。

氏康の策とは調略である。

憲政方の人数は多く、できるだけでも人数を減らそうとの考えであった。

しかし一部には忠義一本の武将もおり、その一人が長野業正である。


「どうでしょうか、北条家に付いては?民の皆さんは更に発展いたしましょうし、また新たにいっそ主家を変えて氏康様に奉公するのも良いかと思います。」

「わざわざ遠いところからお疲れなことで……。

しかし、一度決めた主家は去ってはならぬのが長野家の決まりでござる。申し訳ござらぬのぅ。」

「左様ですか……。それではまたの機会で。」

「おう。気を付けて御帰宅くだされ。」


北条家の使者が簡単に引き下がれるのはもう既に北条家の人数が調略により上杉家の人数を上回っていたからである。

そのため業正などは無理とわかっていて一応使者を出したわけである。


「殿。申し訳ございません。長野業正の調略に失敗いたしました。」

「構わぬ。もともと無理とわかっていたからの。しかし遠路大義であった。ゆっくり休め。」

「殿。もう既にご準備は整っています。」

「よしっ、進め!目指すは上杉憲政の攻略じゃっ!一気になだれ込め!」

「おおっーーー!!」

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