第10話 三つ鱗

「武田が敗れましたか。さて……。俄には信じがたいですな……。」


小田原城にて北条氏康は呟く。


「確かに信じられないのもわかりますが上州箕輪城にて武田本軍は総崩れ、甲斐の国に退却し信濃の進出をはかっております。」

「………。そうか。」

「殿。いくら手強い業正でも武田との戦のあと多くの兵は捻出はできませぬ。」

「上杉憲政を追い出す好機か……。」


小田原北条氏は数年来、上杉憲政との戦を続けている。

しかし今までは武田や今川、里見などの邪魔があったが武田、今川とは同盟を結び脅威がなくなり里見に関しては今では全く鳴りを潜めている。

何度か憲政との衝突はあったが長野勢により悩まされてきたので、今の今ほど好機と呼べるものはなかった。


「殿。今でございます。今の我らならば約四万の兵力をもって憲政を討つことができましょう。」

「うむ……。」


煮えきらないように見える氏康だが、こういうときの氏康はものすごくでかい策を練っている時によく見られる。


氏康はこのあと、業正を含めた憲政家臣たちに書状を送った。



謀略である。

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