第8話 城攻め前夜
「むやみに敵に寄ってかかるとは危険極まりないことだとわからぬのかっ!」
「申し訳ございませぬ!」
信玄は義信に怒鳴りつける。
元々の原因は昌豊軍による無謀な突撃にあるが、信玄はそれを知らされていなかった。
「それに加え夜営する際は十分な警戒が必要だと日頃からいい添えていたであろう。この度はどうしたのだ?」
信玄の口調がやや優しくなる。
「ははっ、まさか夜襲とは……。」
「まぁ、考え直せばこのたびは我も悪い。」
「………。申し訳ございません。」
「皆の者!あと数日準備を整わせ箕輪城に攻めかかる!決行は明後日の朝とせよっ!」
「ははっ!」
一方、箕輪城……。
「城周辺の細工を怠るな。ハネ天井のゆるみ、竹盾の準備や間道の目印まで足軽一兵に至るまでよく確認させよ。加え明日までに兵糧を全て入れ込み城下町の民、すべてを城に入れろ。」
業正の指示は矢継早であった。
また、業正は天候の利用も考えていた。
「殿。今後しばらくは赤城及び榛名からの風の勢いが強うございますが?」
「からっ風か?」
「恐らくは。」
「左様か……。さてどう利用しようかのぅ。」
「業正様!」
「お!正勝殿どうしました?」
「間者からの情報によると武田勢は明日か明後日には箕輪城の攻撃にはしるとのことだそうです。」
「なるほど……。諦めると思っていたがまだまだ懲りんか。まぁ仕方があるまいが。」
「いかがなさいます?」
「このたびは各地の地侍方は呼びよこさなくてよろしい。我ら箕輪城だけの兵で追い散らすこととする。それだけの計画は練っておる。そう言い渡せ。」
「ははっ!」
それと同時に業正は援軍の要請を越後の上杉謙信に届けた。
武田勢が前回の反省をし北条や今川からの援軍があってはかなわないからである。
しかし武田の増上慢によりそれはなかった。
そして………。
翌々日の深夜。
「信玄様。支度はできております。ご指示を。」
「先鋒は義信と昌景。二番手に昌豊と信茂。本陣に我と勘助にいたす。皆の者!静かに進め!」
武田軍約三万六千が箕輪城に向かう。
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