第2話 信玄の書

長野業正はこの年、五十六である。

この年なのだからかもしれないがこの男から出る策略は並々ならぬものであった。

たが、その鬼謀は自身のためではなく、主君·上杉憲政のために使っていた。

しかしその憲政であるが近年、上州への影響が弱まり実質、業正を中心に各地の地侍が治めているに変わらなかった。


業正の元、上州各地の地侍は結束力は高かった。


箕輪城·大広間


「殿ーーーー!信玄から…。」

「おお書状か?遠くからお疲れ様ですな。」

「い……いえ。」

「どうせ昨月と同じであろう?見ずともよい。」

「よろしいのですか?」


和田業繁が問う。

長野家臣団の中で武勇が優れていた。


「民衆政治から全く離れた信玄の指図を受ける言われはない。甲斐の民も哀れなものだな。」

「しかしこのままでは大軍を送ってきますぞ。」

「構わん。民の力を借り跳ね返す。」


その時、上泉伊勢守が到着した。


「おお!上泉殿!よく来られた。ささっ、こちらへ。」

「信玄から愚かな書状が来ましたか…。」

「ああ、受ける気はないがな。」

「流石です。」


伊勢守は胸中で喝采した。


「それでじゃ、上泉殿。ちと頼みがあってのぅ。」

「我であれば何なりと。」

「この書状の返答を信玄に届けてくれぬか?」

「良いでしょう。ちょうど塚原殿との交流も終えたところです。」

「よろしくお願いしますぞ。」


上州の風は箕輪から甲斐に向かう。











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