第3話
「わー、かわいい!」
「ぼく、ごろねこといいます。よろしくおねがいします。」
「にゃ!」
「こちらはちびちゃんです。」
「にゃにゃ!」
「ええ、しゃべるの!」
「ぼくたちはちえねこ族ですからね。」
そういってトラ柄の猫、ゴロ猫はちょっとドやる。チビとやらも同じ知恵猫のようだが、まだ幼い為に言葉がしゃべれないようだ。
「ごはんありがとうございました。」
「いえいえ、おそまつさま。」
「ねえおかあさん!私この子たち飼いたい!」
きらきらした目で女の子は拾ってくれた女性のお母さんに言う。そういうとお母さんは困ったように猫たちに視線を向ける。
「すいません、ぼくたち旅しているのでここにずっといるのは無理です。」
「にゃあ。」
「ええー!」
「ただ、すいませんがお金がほしいので何かお仕事ありませんか?」
「え、ええ、どうしましょうか。」
おばさんも流石にちょっと面倒ごとになってきたといった顔になってしまった。
「もしよろしければ、ここのお店の呼び込みをやりますよ。ごはんと、ちょっとだけお金がほしいんです。」
「あら、それならばお願いしようかしら。」
「それじゃあ、お願いします。」
「にゃうにゃあにゃ。」
「おねがいね!ゴロちゃん!チビちゃん!」
この二匹はこれで食いつないでいた。リアルおしゃべり招き猫という立場はなかなかに強く、意外と猫の手を借りたがる人もいるのだ。
「いらっしゃーい!お野菜やすいですよ!」
「にゃあー!」
「あら、ゴロちゃん、今日も元気ねえ。」
「はい!今日は大根がやすいそうですよ!」
「あらー、頑張ってるわねえ。」
お客さんはそう言ってゴロ猫の頭を撫でる。
「あとほら、これ。」
「わあ、ありがとうございます!」
そういうとお客さんは煮干しをくれた。三つあったのでチビに二つ上げる事にした。
「ほらお客さん、猫ばっかじゃなくてお買い物も。」
店主の旦那さんが声をかけた。
「あら、ごめんなさいね。」
そういってお客さんはいくつか野菜を買って行った。
「ふう、ありがとうな、ゴロ。」
「はい!」
旦那さんは猫を店の前に立たせる事を当初嫌がっていたが、思った以上の効果に文句が言えず、最近では恩も感じてきているようだ。
借金のある彼は人知れずため息と愚痴を吐いている事を、そのよく聞こえる耳で聞いたゴロ猫は知っている。それが最近柔和になったのがうれしくて、同時にここが魚屋や肉屋じゃなくてよかったなあと思っていた。
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