第2話

「うにゃあ。」

「ちびちゃんどうしましたか?」

「にゃう。」

「お腹すきましたか。ごめんなさいね、ぼく狩り苦手で…」


木漏れ日の下、そういって二匹が話す横では首から血を流し動かない男が倒れている。


「はあ、ただ乗りで馬車にのせてもらいましたけど、まさか野盗がでちゃうなんて。」


トラ猫は両前足に機械の籠手を着けて後ろ脚のみで立ちすくんでいた。機械の籠手はトラ猫の前足と連動する様に動き、その甲には血濡れたダガーナイフがとりついている。


近くの雑草でそれを丁寧に拭いて、その後に少しだけナイフを舐めて綺麗にした後、ばんざいする様に前足を上にあげる。


すると籠手と短剣は背中に背負った金属フレームに沿い小さく折りたたまれた。トラ猫が前足を降ろすと小さな黒猫が男の死体に向かって口を開けているのを見る。


「ダメです!」

「にゃ!」


トラ猫はねこパンチをかますと黒猫はしょんぼりして引っ込んだ。


「人はたべちゃだめですよ。」

「にゃう…。」


それは先祖代々続く彼ら知恵猫族の掟である。その知恵猫族は今や二匹だけの時点で守る意味に迷いが出るも、この子猫にだけは守ってもらわなければならない。


「ごめんなさいね、そのかわりおんぶしてあげます。」


トラ猫はそう言って背中を向ける。ナイフや籠手が付いた機械を背負っているが、それ故に乗れる場所もあった。


「にゃう。」


子猫は首を振りながら、トラ猫を追い越して街道へと歩き出した。


「えらいですよ、ちびちゃん。」


そう語り掛けて歩きながら子猫に顔をすりつけた。







「やっとたどりつきました…。」

「ぴい。」


町の隅っこに転がる二匹。とはいえお腹がすいてしまっている今、どうしようかと考える事すら難しくなってきている。


「あら!あの時の!」

「うにゃ?」


一人のおばさんが声をかけてきた。


「無事だったのねぇ、怪我は無いの?」

「はい、だいじょうぶですよ。」


顔の位置が高くて遠いのと逆光でよく見えない。だが恐らく一緒に馬車に乗っていた人だろう。なお我々は幌の上に勝手に乗った無賃乗車であったが、途中野盗が襲ってきた為に飛びかかり馬車を逃がしたといった形だ。


「本当に大丈夫なの?」

「あ、ごめんなさいお腹すいてます。」

「あら、それじゃあごはん食べる?」

「おねがいします!」

「にゃ!」


報酬を考えずに行った行動だが、それでもしばらくやっかいになれないかなあとトラ猫は思ってしまった。

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