第21話

 そのときだった。窓ガラスに石でも当たったのか、コンッと小気味の良い音が静かな部屋に響き渡る。広輝も始めは何か飛んで来たのだろうとくらいにしか思わず、意識を向けなかった。しかし、数秒後再びコンコンッと音がする。今度は二回。まるで誰かがノックしているかのようだ。しかしここは二階である。きっと偶然だろうと、広輝はこれまた無視をした。

 しかしさらに数秒後、今度はゴンッと何かが強く窓に叩きつけられるような音がする。さすがにもう、何かが飛んできたという理屈で説明することが出来ない。

 広輝は思考を邪魔されたことに腹を立てつつも、カーテンを開いた。

「うわっ」

 その瞬間、広輝は飛び上がって尻餅をつく。床にお尻を強打したはずだったが、痛みを感じる余裕すらなかった。

 目の前に映る光景が現実のものとは思えず、その悍ましい雰囲気から体が勝手に震え始める。

 広輝は開いた口を閉じることも出来ず、ただ固まっていた。逃げ出さなければ。そう本能が告げるのだが、全身が金縛りにあったように動かない。変な筋肉に力が入って、体のあちこちが痛む。

 すると、再び窓ガラスがコンコンッと鳴らされた。

「ハッ」

 広輝が呼吸とも吐息とも取れる小さな声を漏らしたところで、頭の中に声が聞こえてくる。それはまるで頭の奥に直接語り掛けるような声だった。

「全く。さっさと開けてくれよ」

 目の前の鳥が喋った。

 広輝は驚きとさらなる恐怖に苛まれながら、自分の置かれている状況を観察しようとする。

 目の前、窓ガラスの向こう側には二羽の鳥が窓淵に掴まってこちらを見ていた。一羽は全身が水色で、体調が一メートルはありそうな程大きい。それに比べてもう一羽の方は普通の小鳥のサイズだが、その目以外は全てが真っ白という奇妙な色をしていた。

 そのうち、青い鳥の方がハシビロコウのような長い嘴で、再び窓ガラスを突く。広輝と青い鳥の目があった。

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