捜査

「コリン、やっと戻……。おまえなんか汚れてないか?」

「や……ちょっと藪でこけちゃって」

 コロシアムに戻った僕はすぐに身の汚れを指摘された。それもそのはず、屋根に突っ込んだ際に魔法で受け身を取り切ることができなかった。体を守るのがやっとで、服には派手な穴や汚れがついた。

 コロシアムの様子は外に出る前から変わっていた。死体がなくなったのはもちろん、誰もいない場内にはカノの血痕だけが残った。

「勇者杯は一時中断だ。午後から再開するらしい」

「……あんな惨劇が起きたのに、昼には再開するんですね」

「巨大な金が動いてるからな」

 ここに来る前、コロシアム内では先の試合を無効試合ととるか不戦勝ととるかで話し合っているのが聞こえた。

「俺たちも休んでる場合じゃねえぞ。俺たちに聞き取り調査が来た」

「聞き取り調査ですか?」

「ああ。国営の大会だから国に仕えてる兵士が常駐しててな。すぐさま捜査班を設置して聞き取り調査をしてる。俺たちも前日にカノと一緒にいたってことで聞き取りの対象に呼ばれてるんだ」

 それって、もしかして……。

「もしかして、僕らも容疑者としてカウントされてたりします?」

「かもな。ただ、捜査班も俺たちをそこまで怪しんではいないだろう。お前は昨日初めてここに来たから『以前の事件』と関係ないし、俺も非魔法使いだ」

 以前の事件。何やら引っかかる。

「とにかく、捜査班の方々が待ってる。早いとこ済ませるぞ」

そう言ってギルロは立ち上がって観客席を後にした。僕も置いていた荷物を手に取ってギルロに続いた。


 コロシアムの建物内。関係者専用通路は慌ただしく人が行き来している。僕らは人々を縫って進み、目的の場所に向かった。

「捜査班のリーダーは顔見知りでな。彼女が赴任してきた時からの知り合いだ。もう2年前になるかな」

「彼女って、女性なんですか」

「ああ。『リアラズル』捜査班長だ。史上最年少でこのコロシアムの管轄を任されているらしい」

「リアラズル捜査班長ですか」

 どこかで聞いたことのある名前の気がする。もしかしたら知った顔だろうか。それもあってみればわかる。僕はギルロに付いてコロシアムの中を進んだ。

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