第3話 し·ゅ·つ·じ·ん

「放てーー!」


朝倉城にはすでに国親家臣、吉田重俊によって攻められていたため、出陣というより傍観みたいなものだった。


「若も攻められますか?」

「父上からはそのような下知は出ておらぬ。

我らは眺めるだけでよかろう。」

「さようですか。」


吉田孝頼は吐き捨てる。

(これは長宗我部家の元凶の始まりかもしれぬ…。)

孝頼は、幼い頃の弥三郎を間近で世話してきたが今回の出陣にて失望した。

(やはりできた人間というのは少ないものだわ。)


朝倉城攻めは長宗我部家の勝利で終わった。


「早く撤退せよ!長浜城にて長宗我部を打ち取る!」

本山茂辰は怒鳴る。

本山勢は総崩れ。

しかし弥三郎は、今回の出陣は初陣と認められなかった。


「長浜城では敵を討て。さもなくば朝倉城に駐屯しておれ。」

「私でよろしいのですか?」

「若大将自ら行けば士気が上がるというもの。

これを努められなければ大将なんざいらぬ。」

「かしこまりました。」

(少し老いて来たかの……。

すこしは本気を出さなければ逝くかもしれぬな…。)


弥三郎の初陣(予定)である長浜城攻めが始まる。


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