謝罪
このまま夕方になるまで誰もいない教室にいたかったけど、スマホに手を伸ばすとあかねと桃香からの連絡が何十件ときていた。中身をザッと見てみると、わたしを心配していることばかり書いている。流石に連絡を無視するのは気がひけるので、嫌々ながらも教室に戻ることにした。
扉を開けるとクラス中の視線を集めるが、気にせずあかねと桃香の元へ向かう。わたしが入ったことに気づいた二人はすぐに近寄り声をかけた。
「明良、どこ行ってたの! 心配したんだから」
「ごめん。空き教室でサボってた」
「クラスメイトの言葉で嫌な気持ちになったんでしょう? 安心して、うちらが締めといたから」
あかねは空で誰かの首を絞めるようなポーズをとっておどけている。
「あの、新田さん。今朝はごめんなさい」
いつの間にか数人のクラスメイトが側に来てわたしに謝罪をしてきた。
「大丈夫、もう気にしてないよ」
わたしが謝罪を受け取るが、クラスメイトは申し訳なさそうに首を横に振る。
「いいや、新田さんの気持ちを考えず無神経なことを言った」
「そうよ。新田さんが第一発見者ってだけで犯人扱いしたんだから」
「もうあんな酷いこと言わないわ」
クラスメイトたちはかなり反省しているのか、一人は目に涙を浮かべている。二人がどうやってクラスメイトたちを反省させたのかは、聞かない方がよさそうだ。
「今度から気をつけてね」
「はい」
「ごめんなさい」
これ以上謝罪を求めていないわたしは、軽く手を振って注意することで止めることにした。クラスメイトたちは分かってくれたのか、もう一度謝るとわたしから離れていった。
ふぅ、とため息をつくとあかねと桃香がこちらをジッと見ている。
「……なに?」
「いや、明良は優しいなと思って」
「わたしだったら、お詫びに何か奢ってもらったんだけどなー」
「反省しているみたいだからいいよ」
文句を言う二人にわたしは宥める。
「だいぶ調子が良くなったならさ、帰りにどっか寄って帰ろうよ」
「いいね。美味しいクレープ屋が近くにあるから食べに行こう」
「うん、行く行く!」
二人の提案にゲンキンにも気分が明るくなったわたしは、放課後を楽しみにしていた。こういう時程、時間が過ぎるのが遅く、ようやく授業が終わると、二人を呼んで学校を飛び出した。
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