周囲の態度
次の日、学校へ行こうと玄関を出ると家の前にあかねと桃香が立っていた。特に約束していなかったので、二人に近付いて尋ねることにした。
「おはよう。なんか約束してたっけ?」
「おはよう。昨日の事が心配で迎えに来たんだ」
「そうそう。また明良が体調崩したらいけないから、二人で様子みようって昨日あかねと話して決めたの」
「なんか悪いね。二人に迷惑かけて」
「気にしないでよ、わたしたち友達じゃん」
「ほら、行こう」
桃香に手を引っ張られながらわたしたちは学校へ向かった。
教室に入るとわたしを確認した途端、クラスメイトの話し声が止んだ。その代わりヒソヒソと小声で話している。
「新田さん、学校に来れたんだ」
「な。俺、てっきりダメかと思ったわ」
「第一発見者でしょ? 怪しいよね」
まるでわたしが田山を殺したみたいな会話が聞こえる。いつもなら違うと怒鳴るのに、冷ややかなクラスメイトたちの視線が恐くて何も言えない。
「ちょっと! 変なこと言わないでよ!」
「そうよ。明良が聞いてるでしょ⁉︎」
会話しているクラスメイトにあかねが怒り、桃香はそっとわたしの耳を両手で覆う。
二人の気遣いが嬉しいと同時に、わたしのせいで二人に迷惑を掛けたくないと思い、桃香の両手からすり抜けて教室を出て行った。後ろからあかねがわたしを呼ぶ声が聞こえたが、それを無視して間と昼食を食べた空き教室に入って内側から鍵を掛けた。
「どうしてわたしがこんな目に……」
誘拐事件が起きてから、周囲の反応がガラリと変わった。知らない人からジロジロと見られて、クラスメイトたちからはヒソヒソと陰口を言われる。SNSには匿名でわたしの個人情報と事件の様子を見て、面白おかしく過激な文章が書き連ねている。その全てが恐くて仕方がない。何も悪いことはしていないのに、勝手な憶測で決めつけてわたしを評価する。
わたしは滲んだ視界を手の甲で拭うと、膝を抱えて扉に寄りかかり、大きなため息をつく。しばらくすると、チャイムの音が鳴ったが教室に行く気にもなれず、そのままうずくまる。何度かスマホが鳴る音が聞こえたけど、それを見るのが嫌になり電源を切って目を閉じる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます