説得と結果

 家の前に着くと、わたしはホッとして玄関を開けた。

「ただいま」

「おかえりなさい」

 わたしの声に母がすぐに迎えてくれた。

「ご飯は出来ているけど、どうする?」

「いらない。しばらく友人のところに泊まることになったから」

 わたしの言葉に母は一瞬固まるが、すぐに尋ねてきた。

「友達って、あかねちゃんや桃香ちゃん?」

「ううん。例の事件で会った子。一人暮らしだから、アパートに一人でいるのが恐いからしばらく泊まって欲しいって」

「そう。それならうちに来ればいいのに……」

「あんまり外出したくないみたい。行ってもいい?」

「そんな、二人だけなんて危ないわ」

「大丈夫。いざとなったら他の子も泊まって複数人で生活するから」

 本当はそんな決まり事はないけど、母を説得する為に嘘をつく。

「……気をつけなさいよ」

「ありがとう」

 しばらく考え込んだ母は渋い顔をするが、大きなため息をついて外泊を許してくれた。

 わたしは自室に戻って、旅行鞄に必要な物を詰め込んだ。その間に田山からグループチャットで住所を送られたので、アプリを使って音声案内設定をして準備を整えた。

「行ってきます」

 わたしは鞄を持って家を出て行った。人が死んで出来た状況だけど、親の監視がないお泊まりなんて、楽しみだ。何事もなければ田山と遊びに行けばいいし、適当な事を言ってしばらく居座ろうかな?

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