田山のお願い
「そうね。新田さん、しばらく一緒に行動してくれない?」
「え、何でわたしが?」
自分が指名されるとは思わなかったわたしは、素っ頓狂な声を上げた。
「新田さん。行動力があるから、いざという時頼りになりそうだから」
「しばらくってどう過ごせばいいの? 学校は違うし、住んでる場所も違うでしょ?」
「それならわたしのアパートに来ればいいわ。一人暮らしをしているから、わたしの家から学校に通えばいいから」
名案と言わんばかりに田山がぐいぐいと話を進めていく。
「その提案、わたしにメリットはあるの?」
「最近、学校でも家でも休まらないじゃないの? 誰もが興味本位で事件について触れてくるから」
渋るわたしに田山はそう尋ねてくる。確かに学校ではクラスメイトが、家では両親がわたしを腫物のように扱うので、心が休まる時間が少ない。
「……それは、田山の言う通りかも」
「わたしの家では自由に過ごしていいわ。食事はわたしが出すし、家賃とかも請求しない。わたしが安心するまで側に居てほしいの」
田山の提案にわたしの中の天秤が泊まっていい方に大きく傾いた。
「学校から近いし、いいかも」
「でしょう? お願い、人助けだと思って」
田山が両手を合わせて頭を下げる姿を見て、わたしは提案に乗る事にした。
「分かった。母に相談して許可が出れば、着替えを持って行くわ」
「ありがとう」
ほっと安堵する田山だが、まだ決まってないのに、嬉しそうな顔をしている。……母から反対されてもゴリ押しして泊まれるように説得しよう。
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