手掛かり
中川の言葉に何かないか見てみると、玄関らしき場所に何かが置いてある。なんだろうと、わたしは梯子を登りきって地上に這い出る。恐る恐る近づいてみると、窓から差し込む微かな朝日を複数のスマホのディスプレイが反射していた。その中に自分のスマホを見つけたわたしは、すぐに手を取って操作する。
しかし、電源を入れるとバッテリーが切れたのか、空の電池マークが表示されていた。
「ダメか……」
「何が駄目だったんですか?」
「うわ、びっくりした⁉︎」
いきなり後ろから声を掛けられて、わたしは慌てて後ろを振り向いた。そこにはこちらを覗き込んでいた羽間がいた。
「あ、スマホここにあったんですね!」
「でも、バッテリー切れで使えないよ……」
羽間も自分のスマホを手に取って電源を入れると、わたしと同じようにバッテリー切れの表示が出ていた。
「本当ですね。他の人もそうなんでしょうか?」
「下から登って来た人から調べてもらおう。ところでここってどこか分かる?」
わたしの言葉に羽間は辺りを見回した。すると、羽間は何かに気が付いたのか、カウンターに向かう。そしてカウンターに置いてあった紙を拾って、わたしに見せて来た。
「ここ、市内の廃ホテルです。心霊スポットで有名なところで、少し歩けば国道に出られるはずです」
そう言って羽間が見せた物はホテルのパンフレットだった。無残な姿になっている玄関ホールは、色褪せたパンフレットの中では煌びやかなものになっていた。同じ構造であることから、この建物のパンフレットに間違いないだろう。
パンフレットの裏を見ると簡単な地図と住所が書かれていて、建物は山の中にあり、ホテルから国道まで一本道が敷いている。
「本当だ⁉︎ じゃあ、そこまで歩けば助けが呼べるのね!
「なんだ、ここから出られるのか‼︎」
わたしと羽間の言葉を遮るように、中川が地下室から出て来た。
「うん。ただ、ヒッチハイクしないと助けは呼べないけどね」
わたしはバッテリー切れのスマホと古くなったパンフレットを見せると中川はガクッと肩を落とした。
それから次々と地下室から出て来て、最後は玉木を地下室にあったシーツで体をくくり、上から引っ張りながら登る手助けをする。下からは玉木の体を支える形で植本が押したことで、全員が地下室から出ることに成功した。
「まだ室内だけど、生活感がある分マシですね」
ふぅ、と息をつく植本にわたしは残っていたスマホを差し出した。
「はい、あんたのスマホ。使えそう?」
植本は慣れた操作でスマホをいじるが、首を横に振る。これで全員のスマホが使えないことが分かり、わたしが落胆する。
ふと地面にまだ置いてある一台のスマホに気が付いた。全員の手にはスマホを一台ずつ持っている。
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