脱出
「ここでいつまで考えても仕方ねぇだろ。もうこれ使って反対の扉を開けようぜ」
そう言って中川がカードキーを拾い上げて扉に向かって歩き出し、その後を石井が追う。
「待ってよ、星矢ー」
「ちょっと、勝手なことしないで‼︎」
「そうですよ。もし、扉の前に仮面の男の仲間が待ち受けていたらどうするんですか!」
「それなら、これでいいだろう」
植本の指摘を聞いて中川は石井を手招きし、機械の付いている壁に体を寄せた。これで自動ドアが開いても正面から攻撃される心配はない。
その様子に何も言えなくなった植本に中川はニヤリと笑う。
「それじゃあ、開くぞー」
カードキーをかざすとピッと甲高い機械音の後、自動ドアが開いた。
その先に誰かが潜んでおらず、廊下が真っ直ぐ伸びているだけだった。
ドアの向こうが安全だと知ったわたしたちは、慌てて走り出した。ドアより遠くの場所にいたから、カードキーを持っていないわたしたちは生きた心地がしない。もし中川が出て行ってドアを閉められたら、ここから出られなくなる!
「そんなに慌てなくても置いていかねぇよ」
ハハッと笑う中川はカードキーを機械にかざしたままにしている。全員が大広間から出たのを確認した後、中川も自動ドアをくぐる。誰もいなくなった大広間を自動ドアが静かに閉める。
自動ドアの先は長い廊下があり、その突き当たりの壁には梯子が埋め込まれていた。わたしたちがそこまで歩いて上を見てみると、暗闇からうっすら光が見える。
「ねぇ、光が見えるよ!」
「これを登れば、別の場所に行けるの?」
「玉木、登れるか?」
「時間を掛ければなんとか……」
「先にわたしが登る。上に行って何も問題がなければ声を掛けるから」
わたしはそう言うと梯子に手を掛ける。
「新田さん、気をつけてください。もしかしたら、上に仮面の男の仲間がいるかもしれません。慎重に登って、何か異変を感じたらすぐに引き返してください」
玉木に肩を貸している植本が気にかけてくれたので、わたしはますますやる気が出た。
わたしは力強く頷くと、梯子に手を掛けて登り始めた。冷たいステンレスの感触を感じながら、落ちないように一歩ずつ登っていく。光は徐々に大きくなり、梯子の最後に手を掛けると頭に何かがぶつかった。
ぶつかった物に片手を伸ばすと、板のようなものに触れる。上の方に耳を澄ませても、人がいるような気配はない。
わたしは注意深く頭の上の板を押し上げてみた。その板は思ったよりも軽く簡単に上がり、半分開くと動かなくなった。そこから顔を出してみると、どこかの建物の室内に出ていた。ただし、埃や汚れが酷くまるで廃墟のようだ。辺りを見回すが、誰もいない。
そのまま外に出て振り返ると、自分が出てきた場所は地下室らしかった。わたしは下を覗き込んで、地下室にいるみんなに向かって声を掛ける。
「何かの建物に出られた! 誰もいないから登ってきて!」
「わかった。近くに何かないか見てくれないか?」
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