昼食
チャイムが鳴って午前の授業が終わった。それと同時に一斉にクラスメイトが押しかけてくる。
「新田さん、一緒に昼食しない?」
「あ、ずるい。わたしもしたい!」
「俺も! 一緒に食おうぜ?」
「え、いや……」
いつもは話さない子まで一緒に食事をしようと誘おうとするので戸惑っていると、あかねと桃香が弁当を持って割り込んで来た。
「明良はわたしたちと食べるから、帰った帰った」
「明良を困らせると、後で大変だよ?」
二人は睨みをきかせながら言うと、クラスメイトたちは文句を言いつつ、渋々と引き下がった。
「ありがとう、助かったよ」
「気にしないで、全員デリカシーがないんだよ」
「ほんと、ほんと。明良だってゆっくりしたいでしょう」
「そうだね」
二人が近くの机をわたしの机に寄せて弁当を広げる。わたしも同じように食べようとしたが、二人の言葉にハッとなって、弁当を持ったまま固まった。
「どうしたの、明良? ご飯食べないの?」
固まったわたしにあかねが首を傾げると、わたしは勢いよく椅子から立ち上がる。
「ごめん、今日は二人で食べて!」
「え、ちょっと!」
わたしは二人に謝罪すると、そのまま教室を出て行った。あいつがどこにいるかは分からなかったけど、とにかく人が賑わっている場所を目安に探した。走っているわたしを見て指差す人がいるけど気にしない。学校のあらゆる場所を探していると、食堂の入口に一つの人だかりを見つけた。それは食券を買う列ではなく、誰かを囲むようになっている。わたしはその中央へ歩み出す。わたしに気付いた人たちは、驚いた表情をみせているが無視をする。
「羽間!」
「え、新田さん?」
中央にいるであろう羽間に声をかけると、びっくりした声が返ってきた。人だかりをかき分けると手に昼食のパンを持っている羽間がいたので、わたしはその腕を掴む。
「え?」
「走って!」
何がなんだか分からない羽間にそう伝えると、わたしはそのまま走り出した。羽間はつまずきそうになったが、すぐにわたしの後をついて来る。
他の生徒もわたしたちの後を追いかけようとしたが、
「今わたしたちに近付いた奴は、ストーカーで訴えるから!」
と、脅してみると追いかけるのを諦めてくれた。わたしはそのまま誰も使っていない空教室に入り、羽間が入ると同時に鍵を掛けた。
「これでよし」
「あの新田さん? これはいったい?」
「え? 昼食くらいゆっくり食べたいでしょ? あんたも苦労してると思ったから連れて来た」
わたしは自分の弁当を開けて食べ始める。羽間は何故かそれをぼーっと見ている。
「食べないの?」
「あ、いただきます」
羽間はハッとして袋からパンを取り出してかぶりついた。
「あんたのとこも騒がしいの?」
「はい、そうですね。皆、事件の詳細が知りたいのか次々と質問してきます。今まで話したことのない人まで来るので、戸惑っています」
「そうだよね。これが毎日続くとなると、辛いんだけど」
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