第5話

「・・・・・・・何してるの?」


俺が道端に這いつくばりながら、異常がないかどうかを確認していると不意に声をかけられた。振り向くと住山がいた。


「あっ、住山」


「あっ、よかった。もう流石に覚えてくれたんだね」


ほっとした顔をする住山。失礼な奴だな、人の名前ぐらいちゃんと覚えられるよ。


っと、今はそんなことをやってる場合じゃないんだ。


俺は通学路の途中の道端で這いつくばりながら、異常がないかどうかを確認していた。このご時世、一体どこに爆弾が落ちてたりとか毒物が落ちてたりわからんからね。すぐそこに手榴弾が落ちてたりするかもしれない。


「いや、というか何してるの?三条さん・・・・・・」


「なんか爆弾とか落ちてないかなーって」


「落ちてたら困るよ・・・・・・物騒すぎるって・・・・・・。というか、あの・・・・・・・その・・・・・・気をつけたほうがいいよ。その、見えそうになってるから」


「え?」


気がつくと、確かに地面に這いつくばるようにして探してたから尻が上がりすぎて見えそうになってる。


おっと危ない危ない。


にしても、こんなことで赤くなるとは、顔に似合わず意外と初心な奴だ・・・・・・・・いやまあ、俺が言えたことじゃないが。というか、俺も同じ状況になったら同じような反応するだろうし。


「私が何をしてるのかって?翠蓮院さんのファンクラブに入部するための試験を受けてるんだ」


「試験?」


「そう試験」


真ん中さんに言い渡された試験の内容。それは翠蓮院さんの朝の登校にあわせて、その通学路を前もって警備し、不審物や不審者が翠蓮院さんを傷つけたりしないようにする。それをきちんと勤めあげたら合格って感じだ。


いや、前回真ん中さんが醸し出してたシリアス感からして、それこそよくある成り上がり系みたいにいきなり最上級幹部と一騎討ちさせられたりとか、場合によってはクマとかとも戦わせられかねないと覚悟してたんだけど、想像よりも地味な試験内容だったんで拍子抜けだ。やっぱり無駄だったんだよ、あのシリアス。


せっかく俺がいきなり最上級幹部との一騎討ちに勝って、『バカな!?』みたいになって一気に成り上がる計画立ててたのに・・・・・・。


いやまあそんなことできないけど。俺、チート系主人公じゃないし・・・・・ていうかバトルものの主人公じゃないし。


・・・・・・いやでも、『果たしてその試験内容とは!?』みたいに次の話まで引っ張ったわりには大した試験内容でもないけど、これはこれでけっこう重要だ。侮ったらいけない。うっかり不審者を見逃したりなんかしたらそれこそ大変だ。地味だがけっこう難しい、決して油断ならない試験ではある。


「と、いうことなんだ」


「なるほど、それでそんなことしてたんだ」


「うん、まーでも見たところ不審物の類なんかはないみたいだし、次は不審者がいないかどうかだね」


きょろきょろと辺りを見渡す。今の所の不審者は地面に這いつくばる、変態女装男のみだ。・・・・・・いや誰が変態だ。


とりあえず立つか・・・・・・ちゃんと立って探そう。


立って、きょろきょろと辺りを見渡していると、ふとある一人の人物が目に入った。


その人物はこそこそと電柱の陰に隠れ、一見すると小学生くらいにも見える背丈、滑らかな光沢の銀髪を腰まで伸ばして、マスクとサングラスをつけロングコートに身を包んだ少女がいた。


うわっ、怪し!


なんだアイツ怪し・・・・・・いや怪しすぎるだろ!そんな怪しさの概念みたいな格好した奴いる!?もはやわざとだろ!


「何あれ・・・・・・・」


住山も若干引き気味だ。


「あれは・・・・・・不審者」


「うん、不審者だね」


「変態不審者さん」


「うん、変態かどうかわからないけど、不審者だね・・・・・・」


「よし、声をかけてみよう。もう翠蓮院さんが登校してくるまで時間がない。もしなにか良からぬ目的を持った人だったら翠蓮院さんに接触する前に止めなくちゃ。たとえこの命に代えても止めてみせる」


「そんな悲壮な覚悟を・・・・・・」


私たちがいるのとは反対側の歩道にいたので、気づかれて逃げられたりしないように出来るだけこっそりと電柱の陰に隠れる人物へ二人で近寄っていく。


しかし、俺たちがその人物の後ろまで近寄ると彼女はこちらを一切振り向かずに言ってきた。


「・・・・・・翠蓮院鏡花ファンクラブの部員さん、来ると思ってた」


「なに!?」


「いやあの、僕は部員ではないのですが・・・・・・」


謎に強キャラ感を出してきたこの少女は一体何者なのか!?


その正体が気になるところで、書くの疲れてきたからまた次回!じゃあね!

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君のためなら女子になる オオサキ @tmtk012

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