第3話
あの男子生徒の用事はどうやら俺への愛の告白だったみたいだ。
とりあえずこっぴどく振ったら、あいつ、顔を真っ赤にして興奮していた。ひょっとして自分の歪んだ性的欲求を満たすために俺に告ってきたわけじゃねえよな・・・・・・・。
だとしたらもっとえぐるようなこと言って振ったほうが良かったか。
しかし、女子っていうのはこんなにも告白を受けるもんなのか?入学してからこの三週間、けっこうな頻度で告白されてるんだけど・・・・・・。
それもああいう奴ばっかりに告白されてる気がするんだけど・・・・・・・。
うーん・・・・・・・しかし、もう勇気が挫けてしまった。もうここから翠蓮院さんに話しかけるなんて出来そうにない。こんな状態で話しかけたら、絶対に漏らす。それはもう盛大に漏らしてしまうだろう。それか吐く。吐くか漏らすかする。大惨事だ。
ふと、テニスコートの方を見ると、ちょうど翠蓮院さんがテニスをしていた。そういえばテニス部の人たちに請われて体験入部をするとか言ってたな。翠蓮院さんは勉強もできるけど、運動もかなりできるから、文化部運動部、両方から引っ張りだこなんだ。それでとりあえずいろんな部活に体験入部してる。ただ、彼女はもう文芸部に入ってるから、これ以上兼部することは多分ないだろう。
ああ、彼女は今日も美しい。オレンジ色の夕日の中で髪をなびかせ、ラケットで球を打ち返す様はまるで女神の優雅な遊びようだ。
・・・・・・・いやポエムかよ。
いやまあ、俺が思わずポエム的表現をしてしまうほど美人なんだ、翠蓮院さんは。
せっかくだし、今日はこのまま翠蓮院さんを眺めてようかな。陰から見守ることも立派な護衛だ。
ということで、どっか隠れるところはないかな。
俺がキョロキョロ辺りを見渡していると、隠れてこっそりとこちらを見守る爽やか系イケメンがいた。
あれ・・・・・・。あれは・・・・・・えっと・・・・・・。
「あれ、えっと・・・・・・・誰だっけ」
「す、住山です・・・・・・朝に名乗ったと思うんだけど・・・・・・・」
ああ、そうだったそうだった。住山だ。
「で、その住山がこんなところで何してるの?」
「あ、ああごめん、立ち聞きするつもりはなかったんだけど、偶然通りがかってちょっと気になって・・・・・・」
ああなるほど。あの告白を見ちゃったのか。確かにあんな状況を見れば気になりもするか。
「いいのかい?断っちゃっても」
「いやいいでしょ。あれはもう断られに来てるんだよ」
「そ、そうなの?」
「それに、お・・・・・私にはもう一生を捧げようって心に決めた人がいるからね」
「え!?そ、それって・・・・・・」
なぜかショックを受けたようなリアクションをした住山は、俺が視線を送る先を見て気づいたらしい。
「あ、ああなるほど・・・・・・・。い、いやでもこれって安心していいのかな?女子同士でそういうことだってないわけじゃないし、これはやっぱり焦ったほうがいいのかも・・・・・・」
「?何ぶつぶつ言ってんの?」
「い、いやなんでもない!こっちの話だから!」
ふむ・・・・・・朝はコイツは役に立たなそうだと思って相談しなかったわけだけど、よく考えればコイツはイケメンだし、女子と話とかするの慣れてるかもしれない。
コイツに相談してみよう。
「と、いうわけで私は翠蓮院さんとどうすれば仲良くなれるか考えてるんだ。なにかいい案ない?」
「何がというわけでなのかわからないけど・・・・・・いやでもいい案って・・・・・・・そんな敵に塩を送るようなのは・・・・・・・!」
「・・・・・・塩?いやでも一生の頼みだから!お願い!」
俺は手を合わせて祈るようにお願いする。・・・・・・・ていうか今気づいたけどコイツの方が背高いからなんか常に上目遣いみたいな感じになるな。
俺の必死のお願いに住山は
「ぐっ・・・・・・」
と苦悶の表情を浮かべながら絞り出すように案を出してくれた。
「ぶっ、部活とかに入れば・・・・・・・いいんじゃないでしょうか」
「部活・・・・・・そっか部活かあ!」
なるほどこれはいい案を聞いた。
部活に入る。明日早速やってみよう。
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