第8話 奇襲(2)

少し威嚇すればミリオは悪戯がばれた子供のような顔をし、たじろぎ始める。

「す、すみません!艦長、始めはほんの出来心だったんです!ですからどうか御願いします。」

そう言って頭を下げ謝ってくる。

「は~~あ。ほんとに貴方は、今回は見逃すので次もし新刊が発行されていたらその時は『まあまあ、良いじゃないですか。別にそんな細かい事に一々突っかからなくても良いじゃないの~~。フェリちゃん。』!」

不意にもう聞けないと思っていた声が聞こえ咄嗟に背後を振り返る。

「?どうしたんですか?フェリス艦長」

ミリオが不思議そうに問いかけるもその声はどこか遠くに確かに聞こえた。

『良いじゃんか~~。学校、卒業したらもう会えなくなるんだよ?最後ぐらい楽しもうよ。せっかく丸二日間もこの狭い密室で二人っきりなんだよ?』

ミレーユが愉しそうにそう言い放ち私のベットに飛び込む。

『そこは私のベットです。速く降りてください。』

そう言って持ってきたボストンバッグを私のベットの上を不法占拠しているテロリストの顔めがけ放り投げる。

『も~~。危ないな!いきなり投げつけなくも良いじゃんか!』

両方の頬をハムスターのように膨らました彼女の顔が今でも鮮明に思い出される。

『国際法上、私には不法占拠したテロリストに対して警告後には発砲する権利が有ります。よって今の攻撃は正当な行為であり評価されものです。』

『フン!な~~にがテロリストですか。私は武器も携帯してないし所属を表す腕章やワッペンさえ着けていない善良でピュアピュアな一般ぴーぷるですよ?いきなり攻撃するなんて戦争犯罪も良いところです!』

そう言ってボストンバッグを投げ返されこちらの視界を遮り強引にベットに押し倒された事も鮮明に覚えている。

「フェリス艦長!フェリス艦長!」

ミリオが叫びながらこちらの体を揺らしてくる。

「!すません。大丈夫です。」

ふと自身の頬冷たく感じ手で拭ってみる。

「?涙?いや、まさかな。」

そう言って再び通路を進み艦橋へ向かう。

自身の頬を濡らした液体を汗だと割り切りる

戦場で散った部下を例えそれが自分を好いてくれた友人だったとしても、私には涙一つ流す資格なんて無い。

だって私の命令が彼女を、彼女たちを殺したのだから。

「ミリオ。今度から同人誌の雑誌売り上げ金の一部を「Dream」に寄付しなさい。それが今後とも同人誌を出す条件です。」

そう言って身をひるがえし暗闇に包まれた通路を進んでいく

   ーーーーーー✝ーーーーーー

夜の帳が完全に降り、満天の星空に最も近い場所。

黒く濁った雲海にその黒鉄の船体の半分を沈め穴だらけになった船体を補修すべくゼルニケは停泊していた。

『オーライ、オーライ、よーし!』

『D5~D9区間配線工事終了。電力復旧します。』

『飛行甲板終端誘導灯、交換作業終了。』

耐冷作業服内部に備え付けられた無線機からは絶えず誰かの報告が流れ込んでくる。

手元に広げた紙の破損状況調査資料を睨みつけ最優先で復旧作業に取り組むべき箇所を今まで経験を元に割り出す。

『まったく、面倒だね。よし、A班はそのまま誘導灯を修理しな。B班も引き続きレーダーを修理、C,D班はまだ動きそうな対空火器の修理、点検作業だよ。急ぎな!』

そう言い放ち、最近やっと覚えた回線切り替え方法を四苦八苦しながら何とか切り替る。

「まったく最近の機械はなんでこうも使いにくいんだい?」

ほうこぼし回線を開く。

『下部作業班、作業は順調かね?』

『ええ、何とか後部装甲板の交換作業は終了しました。これから内部通路の復旧作業に入ります』

『こっちも人手が足らないんだ。そっちの作業は電気回路の復旧だけに済まして上げってきておくれ』

『了解しました。30分で上がります』

そう言ったのを確認し、探照灯を両手に抱え作業現場を照らしている「ヴァルチャー」を見る

『しっかり照らしておくれよ』

ふと耳にはめた補聴器から聞き慣れたプロペラ機特有のローターの音が聞こえた気がした、もう歳でいつもの空耳だと思ったが気分転換をかねて満天の星空を見上げいるはずも無いヘリコプターを探す。

『ッ!上だ何かいるぞ!』

咄嗟に回線を開きそう叫ぶ。。

空に広がっている満天の星空、しかしそこに切り取られたかのように星が全く輝いていない空間がある。

飛行甲板上で探照灯を持っていたヴァルチャー各機が一斉に漆黒の空間を照らす。

大きな四つの二重反転ローター、それを2対の両翼内部に取り付け夜闇に紛れるべくダークブルー色に塗装されたの流線型の輸送機が眩い探照灯の光に照らされ浮かび上がる。

『MMCだと・・・・』

誰かの呟きが無線機から聞こえてくる

両翼の下側、本来は部隊識別マークが描かれる場所には「クロスした擲弾筒」が描かれている。

輸送機の腹がゆっくり開き探照灯の光を受け内部の積載物がキラキラと光を反射させ輝いていた。

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