MMCそれは原点にして原動力

第7話 奇襲(1)

異様なほど静まり暗闇に包まれた作戦会議室。

空調システムが機能していない会議室内部異様に蒸し暑くそこに集合している各局長は全員着崩した格好で暑さに顔を歪めている。

その蒸し暑いサウナ状態の会議室中央、そこにはかろうじて点灯している青い光のホロスクリーンにゼルニケの現在地と周辺の環境が表示されていた。

「それではミリオ、状況説明を御願いします。」

「それでは現状を説明いたします。まずゼルニケの損傷常態です。」

フェリス艦長にそう言われ、手元の端末を操作しホロスクリームにゼルニケの3Dモデルを表示する。

「ゼルニケの対空火器損耗率は60%であり、艦自体の対空能力は35%まで減少しています。」

そう行ってゼルニケの3Dモデルにたくさんのバツ印が増えていき艦の対空火器群を覆っていく。

「続いて艦の損傷常態です。特に艦底下部、艦左舷側、上部飛行甲板の被害は甚大であります。」

そう言って端末を操作しゼルニケの現在の状態を3Dモデルで表示する。

「また、以前レーダーは復旧しておらず我々はこの大空に目隠しをした状態で投げ出されたわけです。」

そう言って端末を操作し3Dモデルをズームアウト、レーダーが機能していない為、ゼルニケ周辺が全てノイズで埋め尽くされている。

「そして以前、我々は長距離通信に甚大な問題を抱えており本部との連絡もままならない状況です。」

「ありがとうミリオ。さて艦長としては今すぐに「エリュシオン」への帰途コースに移行するべきだと思うですがキリア、何かありますか?」

そう行って艦長はこのサウナ状態の会議室にも関わらず一切着崩していないネイビーブルー色の軍服で身を包んだ金髪の女性を見る。

「私も艦長のご意見に賛成です。先の親衛隊との戦闘でこちらのPMTF戦力も大きく目減りしています。」

キリアCIC局長はそう言って端末を操作しデフォルメされた小さいヴァルチャーが大量に表示されるがすぐさま色が濁っていく。

「ゼルニケのはもともとヴァルチャー4個大隊、つまり120機でしたが先の戦闘により帰途したヴァルチャーは40機であり、うち予備機も合わせて稼働可能な機体はわずか30機程度しか残っていない為、私としても艦長のご意見に賛成です。」

そう言ったキリアCIC局長はホロスクリームに表示された数少ないヴァルチャーを悲しそうな目で見つめていた。

「では、ゼルニケの進路を帰途コースに変更し一時エリュシオンへ帰途、その後今件を七海最高司令官に報告します。総員良いですね?」

フェリス艦長はそう言って作戦会議室にいる各指揮官の面々の顔を確認する。

「それでは各員。依然、親衛隊が何故極秘作戦中の我々の動きを捕捉でき何故我々を襲撃したのか、多くの謎が残っています。ですが敵の目的が分からない以上、先程の攻撃が最後だとは限りません。CICは絶えずPMTFを飛ばし周辺の警戒任務に当たりなさい。機関始動はマルヒト、マルマル。整備局はそれまでに何としてでも、レーダーの復旧作業と装甲板の交換作業、対空火器の復旧工事を完了させてください。以上解散!」

艦長の号令に合わせてゾロゾロと作戦会議室を出て行く。

艦長も作戦会議室を後にしミリオもその背中を追いかける。

先の戦闘により電気回路がショートしたのか通路の電灯がついておらず艦長も懐からフラッシュライトを取り出し狭い通路を進んでいく。

通路内部も作戦会議室と変わらず空気循環システムが機能していないのか空気が籠もっており生乾きの血の臭いやアルコールの臭い、前を歩いている艦長の匂いなど様々な臭いが混ぜ合わせた異臭が漂っている。

「まったく。この臭いを嗅ぐのは訓練生以来ですよ。」

艦長がそう呟く。

その頬から雫がこぼれ落ちフラッシュライトの光を空中で反射し宝石のように輝く。

何とか狭苦しい通路を進み同じく狭い梯子型の自動昇降機を登る。

「艦長が訓練生だった時にも極小居住訓練は有ったんですね。」

そう言って差し伸ばされた艦長の手を取り昇降機からで降りる。

「そうですね。私が訓練生だった頃はこのサウナ状態で丸二日間耐圧カプセルにぶち込まれ監禁されました。」

艦長が何でもないことにようにすました口調でそう言い放つ。

「なるほどなるほど。もしかして艦長、告白ゲームってやりました?」

そう言うと艦長が一瞬足を止める再び歩き始める。

「言ったいどなたに告白したんですか?艦長の同期となると、やはりフェリア様ですか?それともアヤメ様、でも美咲様も捨てがたい・・・・・・・・」

ついつい艦長と美咲様が二人だけで密室に閉じ込められている姿を想像してしまい涎が垂れそうになる。

「なるほど。艦内で謎に流通し、新作はいつも高額で取引されていた私と同姓同名の女性が主人公な同人誌はどうやら今日で連載終了みたいですね。」

そう言ってゆっくり振り返った艦長は今まで見たことも無いような怖い顔をしていた。

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