かつてプロローグ的なにかだった物

第1話 空の鯨(1)

ゴン!

もう何度目か分からない爆発音と同時に来る震度に冷静に耐えながら艦長は声を張り上げる。

「ダメージコントロール!被害状況の報告を!」


「艦左舷側!第4~第7区間で火災発生です!」

深刻そうな顔で管制官の少女が答える。

「狼狽えてはなりません!消火班を向かわせn「対空レーダーに感あり!右舷側下方!5機です!」!下方対空迎撃開始!」

迎撃開始を合図しブリッジ中央に表示されている艦周辺を映し出すホロスクリーンを睨みつける。

ホロスクリーンには今にも敵に堕とされそうな自艦とその下方から急速に接近する赤いグリットが5つ映し出されている。

刹那、敵機をあらわす深紅のグリットが分裂した。

「敵ミサイルを検知!数複数です!」

「近接対空射撃開始!アバランチ!テールダー撃てぇえええ!」

「駄目です!間に合いません!」

管制官が声を張り上げる。

その瞬間、艦橋内部の空気が凍りついた。

「急速回頭!面舵いっぱい!上げ舵20!」

咄嗟にそう叫ぶ。

「!急速回頭、おもぉぉかぁじいっぱい!上げ舵20!」

操艦士が声を張り上げる舵を切る。

慣性に身を引かれ、座っいる艦長席のシートに身を押さえ付けられる。

辛うじて視線だけを動かしブリッジ中央に表示されている艦の下方から急速に迫り来るミサイル群を睨みつける。

ゴーン

先ほどとは桁違いの轟音と衝撃が艦橋を襲う。

「被害、報告を!」

そう言って、下がっていた視線を再び上げ正面のスクリーンを再び見つめる。

「各EFEG被害無し!浮遊自体に影響はありません。」

「鑑底後部、第204~301区間で火災、及び漏電発生!」

「すぐに工作班及び消火班を向かわせてください!敵機の現在位置は!」

そういって内線電話を取り上げCICに連絡を入れる。

「CICこちら艦長のフェリスです。展開中のPMTFとの通信状況は?」

「こちらCIC、未だ通信は回復していません。ただ妨害電波の発信源は特定出来ました。データを送ります。そr「すこし待て。」

そう言って艦長席に備え付けられている端末にデータが送られて来くる。

「確認した。砲術官、CICからのデータを元に当該地域にミサイル攻撃を叩き込め。」

そう言って手元のデータを砲術官に転送する

「それからなn「ミサイル来ます!」回避運動!下げ舵10!」

そう言った直後、何とも言えない浮遊感が体を襲う。

「ミサイルの回避に成功!迎撃ミサイルはt!再び高速接近する物体を検知!」

「来るぞ!迎撃ミサイル並びに近接対空射撃用意!射程に入りしだい撃て!」

そう言って再び中央のホロスクリーンを睨みつける。

「諸元入力完了!アイアンアロー射撃します。」

砲術官がそう言って、射撃トリガーを引きVRSであるアイアンアローを射撃する。

「敵機が迎撃ミサイルの射程内に侵入!射撃を開始します。」

それと程同時に迎撃ミサイルが射撃され接近する敵機めがけ一直線に猛進する。

ミサイルが直撃する直前で5機の敵機がそれぞれフレアを放出、それと同時に機体を左に捻り高度を下げ迎撃ミサイルを回避する。

「ミサイル回避されました!敵機下方へ急降下!再度接近中!」

「近接対空射撃を開始します。」

「っ!敵機から再びミサイル!来ます!」

再びミサイルの来襲を告げる管制官を横目に 中央のホロスクリーンを一別し複数ある回避機動の内の最良の選択を模索し声を上げる。

「艦回頭!面舵35、下げる舵10、艦右ロール角15!」

「艦首回頭!おもぉぉかぁじ35、さげぇぇかぁじ10、艦左ロール角45」

「艦右舷対空迎撃砲、並びに全空対地兵器、照準!目標接近する敵『PMTF』!」

艦長の号令と共に空を舞う黒鉄の空母が大きく旋回しながら高度を少しずつ下げていき無防備な艦下部を敵に曝け出した。

この隙を逃すまいと5機のPMTFはクラスターを全開にし展開されている濃密な近接対空射撃の弾雨を突破、照準を無防備な巨鯨の下部に合わる。

「ぶちかましなさい!」

艦長の号令と共に艦底下部の防護壁が展開し内部に格納されているヤマアラシのごとき空対地兵器群が姿を表す。

5機のPMTFは直ぐさま機動変えようと逆噴射し減速すが時すでに遅く大量の空対地兵器群が繰り出す弾雨により引き裂かれ純白の雲に吸い込まれていく。

「!さらに艦後方よりは新手です!数は!」

管制官の少女が悲鳴に近い声を上げる。

「どうした!」

震えている少女を睨みつける。

「そ、総数は50です。」

その報告は艦橋内部の空気を一変させるのには十分過ぎる物だった。

     ~~~†~~~

「こちら、バイパー大隊。CP応答どうぞ。CP応答を。クソがこのオンボロが!」

そう言ってアリアは眼下に広がる黒煙をまき散らしところどころが炎上し崩壊した対空陣地を一別する。

なれた手つきで手元にあるつまみを一つ右に回転させ、小隊内チャンネルを開く。

「各小隊長機、制圧状況を報告せよ。オバー」

「こちらフェンサー小隊、敵対空陣地の制圧完了。現在合流ポイントに向け移動中。オバー」

「同じくフランカ小隊、現在合流ポイントの安全確保中。オバー」

「ファンタゴ小隊、敵対空陣地を制圧完了。このまま引き続き周辺を索敵したのち合流する。オバー」

「フォージャ小隊。ファンタゴ小隊と同様に周辺を索敵、後に合流します。オバー」

「了解した。グラウラー小隊!まだ通信は回復し無いのか!」

そう言って、自機よりもさらに高高度を優雅に浮遊している電子戦仕様のPMTF3機を見上げる。

「駄目ですね~~一応、強力な電磁妨害を受けては要るんですがね~~~。!レーダーに感あり、これはミサイルか!」

「光学カメラで捉えました。あれは、アイアンアローです!」

「確認した。」

そう言って、青いレティクルでターゲティングされたミサイルが地平線の彼方に消えていった直後、地平線の彼方が昼間にもかかわらず明るく輝く。

「お!通信回復しまs「ザーーて、ザーかザー、展開中の全大隊に緊急通信です!現在ゼルニケは敵はPMTFの大軍に攻撃をうザーーーdちに帰tザーーーー」

そこから先は耳障りな雑音が聞けるだけだった。

「チッ!やられた!全機帰途するぞ!」

そう言って機体を回転させ、ゼルニケの帰途ビーコンをロックし進路を定める。

「小隊各機に通達!オバードブーストの使用を許可する!遅れるなよ!」

そう言って、左右のスティックと一体化したスロットルレバーを前に押し上げ初期加速状態に移行し慣れた動作でコマンドを選択、実行。

「うっ」

何度体験しても一向に慣れる気配を見せない急加速に思わずうめき声が漏れる。

ただ、限界まで機体を加速させるオバードブーストのおかげで機体の高度は見る見る上昇していきすでに雲を眼下に捉える位置まで上昇している。

「な!」

自身の虹彩の動きを検知したヘッドギアが機体の光学カメラをズームアップさせる。

そこには大量の敵機に包囲され集中砲火を受けている炎上している『ゼルニケ』の姿があった。

   ーーー†ーーー

「艦左舷側上方より新たにミサイル多数接近!」

「アバランチ、射撃開始!回避機動を!」

もう何度目か分からない指示を出し、ミサイルを迎撃、回避する。

「まだ帰ってk「艦直上!敵機です!」艦首回頭!取り舵20!対空射撃k!」

そう言い切る前に激しい衝撃が艦橋を揺らす。

「被害報告を!」

そう言ってホロスクリーンを確認するがノイズが走っており表示されていない。

「ッ!マスト大半!近接対空レーダー機能停止!」

「アクティブ並びにパッシブレーダー探知範囲60%ダウン!」

「後部飛行甲板に被弾!炎上しています!」

プルルルルル

手元の内線電話がけたたまし音を上げ着信を知らせる

「艦長!こちら第2格納庫、炎上中!死傷者多数!消火班及び医療班の応援を!」

「了解しました。すぐに消火班及びに医療班を向かわせます。」

そう言って受話器を叩き込つけ声を上げる。

「聞いた通りです!第2格納庫に至急、消火班と医療班を向かわせてk「艦正面!高速で接近する機体を確認!」対空射撃を!」

管制官の声に半ば反射的にそう叫び、艦橋の周囲をぐるりと囲んでいるモニター、その中央で赤いレティクルでターゲティングされている敵機を睨みつける。

すでに飛行甲板横に備え付けられている80mmCWSや高射機関砲を始めとした各種対空火器は射撃を開始し、濃密な弾幕を艦首全面に展開しているにも関わらず敵機はなおも加速しゼルニケとの距離を詰めてくる。

イヤな汗が背中を濡らし始めた直後、先ほどとは一回り程大きくなった敵機を囲んでいたレティクルの形状が変形する。

「アバランチ敵機をロックオン!」

管制官が声を張り上げる。

「アバランチてぇぇぇえええ!下げ舵30!急速降下!」

艦長の号令と共に数発のアバランチが発射され空中で90度曲がり敵機に向け猛進する。

その間に、ゼルニケはその鈍重な艦首をゆっくりと下げブースターに物を言わせ高度を急激に下げる。

何とも言えない浮遊感が体を襲うが、視線は接近する敵機を離さない。

アバランチのシステムが赤外線誘導から終末赤外線誘導に切り替わり敵機のジェネレーターに目標を定めた瞬間、敵機がフレアを放出しながら重力に引かれ落下する。

全てのアバランチは光に群がる羽虫のように放出されたフレアに吸い寄せられ爆散する。

落下する敵機は再びジェネレーターを展開、そのまま下方へ加速し下方を飛行するゼルニケの飛行甲板に後方から強引にアプローチをかける。

飛行甲板に着地した敵PMTFは脚部クローを展開、滑走路板を切り裂きながら急減し両手で持った『親衛隊機の標準装備である150mmチェーンガン』で飛行甲板上の対空兵器を片っ端から射撃、破壊しながら乱暴に着艦し艦橋に向けその銃口を突きつける。

「艦長!」

管制官の少女の悲鳴が艦橋内部に木霊する。

「総員!落ち着きなさい!相手が撃つ気ならもうとっくの前にここは吹き飛んでいます!」

そう言って艦橋上部、そこに張り巡らされているモニターに映る銃口を睨みつける。

「艦長!所属不明機から通信です。」

管制官の声に艦橋内部に沈黙が走る。

プルルルルルルルル

内線電話が重たい沈黙打ち破るようにけたたましく鳴り響く。

「こちらブリッジ、どうしました?」

「こちらCIC、所属不明機から通信です。」

「繋げなさい。」

そう言って頭上に映っている敵機、その胸部に誇張するかのようにペイントさせている部隊マークを睨みつける。

内線電話の音質が切り替わり、小さく息を吸い込む音が聞こえてくる。

「こちらはs「親衛隊第5いや、第7機動打撃戦隊であるサンダーボルト戦隊ですね。」!なぜゲリラごときがその名を!」

パイロットはどうやら少女らしい幼さの残る声でそう問いかけてくる。

頭上に広がるモニターのに映っている敵機の胸部に描かれた六芒星、その中央に描かれた稲妻のマーク。

「貴官はこのような飛行空母を保有してい組織がただのゲリラだと本気で思っているのか?」

「・・・・・・」

「まあ、いいです。それで?今回はどんな御用向きですか?お嬢さん?」

皮肉を込めた声でそう言い放ち、敵パイロットが何かを話しているがそれを無視し手元のパネルを慣れた手つきで操作しマイクをミュートにする。

「合図と同時に艦首回頭、面舵30、水平維持ベアリングの全ロック機構を解除、それと同時に艦右ロール各60度。」

再びパネルを操作し、ミュートを解除する。

「つまり、我々に降伏しろと?そう言いたいのか?」

「そうです。直ちに武装を解除しこちらの指示に従いなさい!なお従わない場合は、「我々に向けているチェーンガンで艦橋を吹き飛ばすと?」・・・・・・そうです」

敵機のパイロットがそう告げる。

ふと、視線を正面のモニターに向ける。

遙か遠くから高速で緑のレティクルでマークされた機体が確認できた。

「分かりました。ですが一つだけ質問です。貴方に取って正義とは何ですか?」

「え?・・・・・・・・・そ、そんなの総帥がいうことが正義ですよね?」

敵機のパイロットは咄嗟にそう呟き少し混乱気味に答える。

「そうですか、そうですか。私の意見は反対です!振り落としなさい!」

艦長の怒号を合図に鈍重な巨艦が急旋回を始めると同時に、左舷側に付いているクラスターが一斉に点火し艦全体を大きく右舷方向に傾ける。

「まだですか!」

脚部クローを飛行甲板に食い込ませずり落ちないように耐えている敵機を睨みつける。

敵機のモノアイが不気味に光った刹那、金属を強引に引き裂くような音と共に何かが視界を高速で横切ったかと思うとチェーンガンを構えていた敵機の姿が消えていた。

「奴はどこへ!」

思わず声が漏れた。

「艦長!あそこです!」

少女が艦橋後方を指さしながら声を上げる。

「遅いですよ。バイパー大隊。」

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