第9話葛藤
目の前に広がるのは真っ白に統一された
部屋の天井。
カーテンの隙間から光が差し込む。
何故だろう。頭が空っぽだ。色で例えるなら真っ白。
何気なく横にある窓の向こうを見る。
綺麗、けれども風景は見ていたはずの景色とは違った。 そして、頬に当たる布の色は薄暗くなっているのに気がついた。
顔、洗いますか。
ベトベトの肌を洗い流そうとトイレに向かう。
"どうやら体は一応動くらしい。"
水はとても冷たく気持ちがいい。
あえて水を肌に少しだけ残した状態する。
そして、朝の広場に躍り出た。
風が濡れた肌に触れる。
とても涼しい。 そして、清々しい。
伸びた長いつやのある髪は波を打つ。
白味を含んだ青い空は盛大に広がっている。
そして、ギラギラと輝く星が見えた。
すると、突然思い浮かんだ情景。既に体は動いていた。
見慣れた廊下は駆け上がる。
部屋の前に待機した2人。
大丈夫ですから。お待ちください。
大丈夫なんですよね?ホントなんですよね!
あなたもまだ、完全な状態と言えるのか分からないんですから。安静に!
彼女の腕は体を捉える。
1目見るだけでも。お願い。
手を合わせて祈る。
落ち着いて。
肩を同時に叩かれる。
彼は多分大丈夫。いつか目を覚ます。それより、あたしは今のあんたの方が心配。
正気に戻った瞬間目に入った心愛という名前。体が少し解れる。
笑って?
私の頬を揉み、口角をちょいと上に上げてきた。
安心する。この感じ。
久しぶりに見たなお前らのその絡み。
鈍く優しい低い笑い声。
白衣を着た男。「良」と書かれた札をかかげている。
安心しておけ。俺がしっかりと見てやる。
任せとけ。俺が守ってやるよ。
「一緒にそばにいてやる。」からさ。
悪戯な笑みを浮かべる。
やめてよ。できる限りの思いを込めた一言を叩きつける。
あなたみたいな人が彼の代わりが務まると思ってるの?
なんだよ。2人して。姉妹らしいとこあるじゃないか。
私は苦笑する
彼女は以前友達だった。
詳しく言えば、幼なじみだと。
けれど、突然血の繋がった姉だと告白された。
理由は教えてくれない。
仲良くやってるしそれほど気にすることじゃない。そういう事にして2人とも触れる事をしないようにしている。
ただ、向こうは私をどう思ってるのかは知らない。
少なくとも私は未だに彼女をお姉ちゃんとは呼んでいない。
そして、向こうも私を名前では呼んでいない。
人が変わると、言葉の印象って変わるよね〜。
ホントだよね〜
おい、お前らそれってどういう意味だよ。
先程とは少し違った間の悪い表情を見せる。
鏡に向かって同じ事言ってみたら分かるかもね。
悪戯な笑顔をまるで仕返しかのように見せる。
そのお前の純粋か不純かの混合物みたいな顔されると、どうしようもない無気力感に襲われて1番腹が立つ。
こんなに純粋で可愛らしい私たちなのに?
目を大きく見せて、上目遣いで畳み掛ける。
あぁ〜もういいよ。めんどくせぇ…
言葉は強いものの、表情はニヤつき対照的である。
パン!
クラップ音に攫われて私の目は彼女に向けられた。綺麗な白色の肌をした手はスベスベして、心地良さそうだ…。いや、だめ。
一線を超えるべきタイミングは今じゃない。
小さい頃から閉じ込めてきた私の春。
今さら、それを秋から冬へ、木々を枯らしてしまっては勿体ない。なにより、寂しいじゃない。
いきなりどしたの?
おいで。
手を開く心愛。
思い切り足を踏み込む。
そして、熱い抱擁を交わす。
幸せ。私、女に生まれてよかった。
また、人生を歩み直せるかな。
これって、私にとって最良なのかな。
あの人の事を忘れたくは無いけど…
最近読む本は、人についてだ。
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