四:矜羯羅街の歓迎
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「破邪庭番/はじゃのにわばん」
矜羯羅街を管理する巨大な組織。通称は自警団。成立年代は不明だが、この場所を聖地として守護する人間の集まりから発展したと言われている。街の中の大抵の商業の管理や治安維持を行うことが主な活動である。大きな組織である為に潔白な組織とは言えない。しかし彼らのおかげで混沌とした街の秩序が一定に保たれているということは紛れもない事実である。
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粥を食べ終えた
「あ、親父が起きたみたいだ。気にしなくていいよ、今日は休診だから遅くまで寝てるだけだ」
常は寝室へ行き「夕方までには帰るよ。例の患者に街を見せてくる」と寝起きの男に言いつけて部屋を出た。
「これからどこに行くわけ?」
「街を見て回るんだ。とりあえず今日はここ、つまり三番街を見せながらここについて知ってもらおうと思ってね。住む場所は……まあなんとかなるから見つかるまでウチに泊まっていていいよ」
胡は「なんとかなるから」に引っかかりつつも、住む場所には困らないだろうということに感謝した。常が支度を終えるのをもうしばらく待ってから、二人はクリニックを出た。
「さてと、とりあえず一階へ行こう。大抵のものはそこにある」
そう言うと常は最寄りの階段を駆け下りていった。人が二人通れるかという幅で蛍光灯はほとんどが明滅しているか、あるいは光を失ってしまっている。手すりは錆だらけなので胡はなるべくそれを触らないように心掛けた。
時折すれ違うのは普通の人間だったり、例の仮面の人間だ。しかし中には奇妙な形の頭を持つ者もいる。胡はそれらに圧倒されつつ、黙って通り過ぎた。
「さて、着いた。一階だ。少し歩けば大通りに出るから、しっかり着いてきて」
一階は更に暗い。天井は無数の管とコードによって形成されていて、床は常に湿っているようだ。
「わ! 今、なんか黒いのが通った」
「あ、気にしないでいいよ。ハイイロワタネズミって言うんだ。灰ネズミとも言う。危なくないよ」
胡は「お、脅かさないでよ!」ともう見えなくなったネズミに文句を言った。常は「君にも怖いものはあるんだね」と笑った。
少し歩くと陰鬱な路地よりは少し開けた場所に出た。大通りとまではいかないがそこはかなりの賑わいを見せている。道の左右には様々な出店がある。店頭販売だけでなく、怪しげな露店も並んでおり、非常活気があるようだ。
「ここは
常の説明は話半分に、胡は初めて見る景色に驚いていた。奇妙な姿の住民達がこの場所に居合わせている。その光景が彼女にとっては驚愕だった。
「驚いた、この街にもこんなに賑やかな場所があるのね……」
感心している胡を見て常は少し嬉しそうに笑った。ふと、彼は嗅ぎ慣れたいい香りがしたことに気がつく。彼は辺りを見回す胡を呼び止めた。
「胡、どうせならなんか食べていかないかい? ちょっと待ってておくれ、豚肉饅頭買ってくるから。きっと口に合うよ」
「いいの? 正直言ってあのお粥だけじゃ足りなかったのよ……」
常を見送ると彼女は引き続き、あまり遠くに行かないようにして辺りを見回した。全てが新鮮だ。仮面の人間はどうやらかなり多いらしい。珍しいものだと思っていた胡はそれにも驚かされた。
「もし……そこの、」
後ろの方から声がした。胡は微かに聞こえた声の方へと振り返った。そこに居たのは、ボロ切れを纏った老人だった。
「もし……そこのお嬢さん。ちょっと話を聞いていかんかね」
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