6話:「―トラブルからTSⅡ―」

 先に落ちた男二人に変わり現れたのは――それぞれ趣の異なる、二人の〝美女〟であった。

 片方は、ウェーブ掛かった長い金髪に、凹凸の顕著な豊満なボディを持ち。端麗な顔立ちに釣り目気味の目元が特徴的な、煌びやかな美女。

 もう一人は、ショートの黒髪と。深黒い褐色に彩られ、スレンダーに完成されたボディを持ち。また釣目気味の鋭くしかし端麗な目元が特徴な、スポーティーな美女。

 明かしてしまえば、二人の美女は先の男二人張本人。両者が性転換した、完全な同一人物。

 そんな男二人の変貌っぷりが、血侵等それぞれに、少しの驚きと意外な感情を与えたのであった。


「あ?……――ッ!?」


 当初はその端麗な瞳に怒りの色を見せていた、金髪の男改め金髪ウェーブの美女は。しかし自分等を見る周りの視線が妙な事に気付き、己の身体に視線を落とす。そしてそこで初めて、己の身体が女の物へと変貌している事に気付き、目を剥いた。


「うぁっ!?」

「ッ……!?」


 さらに続け、金髪女と褐色女はそれぞれさらに驚き慌てる色を見せる。

 二人は身体こそ見目麗しい美女へと変貌していたが、纏う水着はそのまま。そう、腰回りだけを隠す男性用水着のままであった。

 それぞれの豊満な、あるいは完璧な造形の乳房は隠す物なく晒されている。さらに男性用水着も、金髪女の方はその豊満な尻になんとか引っ掛かっているだけ。褐色女の方は濡れて張り付いているのみで、今にもするりと抜け落ちそうであった。

 自らの姿にそこで気付き。それぞれは頬を染め、慌て己の乳房を腕で抱いて隠し、心もとない水着を掴み支える。

 金髪女と褐色女のその顔から怒りの色は消え、代わりに可愛らしいまでの恥じらいの様子が取って変わり現れた。


「わぁ、素敵」

「思った以上に、ナイスになったな」


 そんな変貌した金髪と黒髪の姿を見止め。血侵と趣意がそれぞれ、意外そうに、そして少し面白がるように言葉を紡ぐ。

 何を隠そう、男二人を美女へと変貌させたのは、他ならぬ血侵と趣意。

 先に男二人の後ろ首を手刀で打った際に、体を変化させる〝スイッチ〟を戯れに入れたのであった。


「ッ……てめぇ等、舐めやがってェ……ッ!」


 そんな血侵等の言葉を聞き留め、金髪女が恥じらいつつも怒りを再燃させる。そして金髪女は、水着を抑えていた片手を最早構わないと形作り、そして再び血侵等へととびかかろうとした。


「――はい、おイタはそこまでッ」


 しかし瞬間、透る声が響き。金髪女のその腕が何者かに掴まれ。女の腕は、そして身は強制的に止められた。

 目を剥き振り向いた金髪女の瞳に映ったのは、先に自分が絡んでいた、王子様のような女。金髪女の腕は、その王子様のような女に捕まえられていた。


「なっ――うぁッ!?」


 さらに動きは、それだけに留まらない。

 王子様のような女は、金髪女の身を引き寄せると、抱き留めて捕まえて見せた。今現在は王子様のような女の身長の方が高く、金髪女はその内に容易に抱き拘束されてしまう。


「まったく、イケない子猫ちゃんだね」


 王子様のような女は、抱き留めた捕まえた腕中の金髪女の顔を見降ろすと、何か凛々しくも妖しい色でそんな言葉を紡ぐ。


「てめッ……!放……!」


 一方の金髪女は、最早女への欲よりも怒りを晴らす方が優先なのだろう。その口に八重歯を剥き出しにして、言葉を荒げ身を捩る。


「――ひぁっ!?」


 しかし瞬間。その金髪女の口から、一転した可愛らしく色っぽい悲鳴が漏らされた。

 その原因は、金髪女の尻に襲い走った、甘美な電流。

 視線を降ろせばなんと、王子様のような女の指先が、金髪女の尻に触れて――いや、その五指を浅く沈めて、嬲り始めていた。


「て、てめ……何すん……」


 突然の事態行為を受け、金髪女は王子様のような女を睨み上げて発想とする。しかしその口は突然の甘美な電流からうまく回らず、険しくしようとした表情も半端に終わり、悩ましく可愛らしい物にしかならなかった。


「いいじゃないか。君たち、ボクたちと遊びたかったんだろう?」


 そんな金髪女に、王子様のような女はそんな言葉を返し降ろす。


「実はボク達も――遊べる(オモチャにできる)子猫ちゃん達を探してたんだ」


 さらに王子様のような女は、そのイケメン顔に妖しくサディスティックな笑みを浮かべて、そんな事を宣って見せる。

 今は相手も相手なだけにごまかされているが、よくよく考えれば王子様のような女のその発言も、なかなかにろくでもない。


「ひぁぁっ!?」


 さらに次には、金髪女からまたも艶の含まれた悲鳴が上がる。

 見れば金髪女の背中に王子様のような女の片手が回され、その指先が金髪女の背中をなぞり伝い、また嬲っていた。


「フフ、良い玩具を見つけたかも」


 王子様のような女は、腕中の金髪女を弄びながらも零し。金髪女の顔を覗き見降ろし、妖しく不敵な笑みを見せながら、小さく舌を出して軽く舌なめずりをする。

 その顔は、完全に肉食獣。捕食者のそれだ。

 どうやら女の姿へと変貌した金髪男を、お気に召したらしい。


「ひぅ……く、玖漣くれん……!」


 一方、それに睨み捕らわれた金髪女は。それに微かに怯え、しかし同時に魅了されかけながらも、何か助けを求める様子で視線を横へと走らせる。

 口にしたそれは、相棒である褐色男もとい今は褐色女の名であり、そちらに助けを求める物。


「んな……!?」


 しかし、そこで目に飛び込んできた光景に。金髪女はより頬を紅潮させ、そして驚き目を剥いた。

 黒髪褐色の女は、ミステリアスだが気弱そうな女に、今は逆転した体格差で、その身を抱かれ捕まえられている。

 しかし衝撃的なのは、そこではない。


「ん……」

「~~っ……っ……」


 なんと褐色女は、ミステリアスな女にその唇を奪われ塞がれていたのだ。

 それも見るに、ただ唇同士を合わせるだけの軽い口づけではない。

 ミステリアスな女の舌は、褐色女の唇をこじ開け、おもいっきり侵入。端からも、ねじ込まれたミステリアスな女の舌が、褐色女の舌に絡みつき、舌や口内を思いっきり嬲り弄び、犯している事が見て取れた。

 ミステリアスな女は、妖しい顔色で美味そうに褐色女の口を貪っている。

 一方の褐色女は少し息苦しそうながらも、それ以上に完全に官能に支配された様子で。その今は凛々しい顔立ちを、しかし蕩けた色で染めている。


「……んぅ」

「ぷぁっ……」


 程なくして、ミステリアスな女は褐色女の口を解放。顔を上げて離す。


「ふふ……」


 そして、王子様のような女とはまた別種のイケメン顔に、悪戯っぽい微笑を作り。その小さな舌を突き出し、その舌先にある何かを見せつける。それは、褐色女がそれまで含んでいたフーセンガム。褐色女の口内を嬲る際に、奪い取っていたのだ。


「モク……もっと欲しい……?」


 そしてミステリアスな女は舌とガムを一度引っこめ含むと。褐色女に向けて、そんな焦らすような様子で尋ねる一言を発する。


「ぁ……ふぁ……」


 対する褐色女は、その褐色の顔を蕩け切った色に染め、言葉にならない吐息だけを零す。

 傍目にも完全に腰砕けになっている様子が見え、自分の身体を支えきれず、ミステリアスな女に身を預け切っている。

 それを肯定と受け取ったのか、はたまた回答など聞く気は端から無かったのか。ミステリアスな女は、食らうように褐色女と唇を重ね、そしてまたその口内を嬲り蹂躙する事を再開した。


「あぅ……」

「おやおや、堪え性が無いね封一ふひとは」


 すでに陥落した相棒の様子に。金髪女は少し臆し、しかし同時に当てられた様子で目を奪われている。

 方や王子様のような女はと言えば、やれやれと言った様子でミステリアスな女の物らしき名を零す。


「ま、ボクも人の事は言えないんだけどね」


 しかし続けそう発すると、また自身の抱く金髪女へと視線を降ろした。

 その眼に浮かぶは、これより金髪女を〝食らおう〟と企む色。


「ぅぁ……ゃめ……!」


 それに睨まれた金髪女は、軽く青ざめると同時に頬をさらに真っ赤に染める。

 このままでは、相棒と同じように腰砕けにされてしまう。その末路から逃れようと、弱々しくも身を捩ろうとした金髪女。


「んむ……!?」


 しかし儚くそして虚しく、それは徒労に終わる。

 また食らうように両者の唇は重ねられ、最早当然と言うように、王子様のような女の舌が、金髪女の唇をこじ開け口内を蹂躙。


「ん……んぅぅ……!?」


 しばしの間、金髪の女は自分の口内を嬲られ堪能される。


「……っぅ、ふぅ」


 数秒後に、王子様のような女はようやく金髪女の口を一度解放。

 一仕事終えたような顔で、また軽く舌なめずりをする。


「ぁ……ふゃ……」


 方や金髪女はと言えば、その数秒間の口内蹂躙の果てに、みごとに陥落。

 相棒同様腰砕けになって、王子様のような女の腕に身を委ね。舌を軽く突き出し垂らし、蕩けた表情で艶のある吐息を漏らしていた。


「フフ、見た目を裏切らない絶品さだね。これは隠れた名品を見つけてしまったかな?」


 そんな金髪女を舐めるように見降ろしつつ。金髪女はそんな上品なのか品が無いのか、判別に困る評価の言葉を発する。


「もう察してると思うけど、子猫ちゃん達は逃げられないよ?逃がす気もない。これからたっぷり、堪能させてもらおうか」


 そして続け、金髪女に向けてそんな宣告の言葉を紡ぎ降ろす、王子様のような女。

 その口調や表面上取り繕った顔こそ、凛々しい王子様のそれだが。反してギラついた獣のような眼は、直接的な欲望獣欲を、まるで隠せていない。

 さらに行動は正直であり、今もその片手指先は金髪女の尻を弄り。金髪女の豊かな乳房を、自身の同じくたわわな乳房と重ね合わせて、その感触を味わい楽しんでいた。


「ぁぅ……そ、そんなぁ……」


 そんな王子様のような女からの宣告を浴び、身を微かに震わせ慈悲でも乞う様な声を零す、金髪の女。

 しかしその顔はふやけ蕩け、体は火照りそしてゾクゾクとした感覚が走る。

 その釣り上がった目尻の眼には、しかしハートが浮かび上がらん勢い。

 金髪女は完全にメスのスイッチを入れられ、王子様のような女にいただかれ貪られる事を、期待し望んでしまっていた。


「――そうそう。お嬢さんたちには、お礼を言わないとね」


 それから王子様のような女は、思い出したかのように振り向く。そこに在るは、最早置いてきぼりになっていた血侵や趣意、仏基等。

 血侵は呆れ顰めた微妙な表情で。趣意は口元を手で抑えて、目を丸くし頬を微かに赤く染めていたが。掛けられた言葉に意識を引き戻される。


「ありがとう、可憐で果敢なお嬢さんたち。とても格好良かったよ」


 そんな血侵等に、王子様のような女は爽やかな笑みを作り、そう礼の言葉を述べた。


「あぁ――いや。こんくらい、なんでもねぇ」

「私も、武の道を歩む者として、当然の事をしたまでです」


 それに対して、血侵と趣意はそれぞれ。取り繕い直して、謙遜の言葉を紡ぐ。


「フフ――さてと」


 そんな血侵等に、王子様のような女はニヒルに微笑み返すと。改めるように一言零す。


「ひぁっ……!?」


 そして最早蕩け足腰立たない金髪女の身体を、易々と持ち上げ、お姫様抱っこの形で抱きかかえる。

 ミステリアスな女もそれに続き、腕中の褐色女を抱き上げる。


「お楽しみの時間だ――悪いね、お先に失礼させてもらうよ」


 そして王子様のような女が最後にそんな言葉を紡ぎ伝えると。

 当初は被害者側だったはずの獣二人は。狙う立場から一転してメスへと堕とされた二人を抱え。その場より立ち去って行った。

 これから場所を変えて。メスとされた二人は獣二人に、おいしくいただかれてしまうのだろう。


「――割れ鍋に、閉じ蓋だな」


 そんなお持ち帰りしてゆく、ないしされてゆく四名の姿を先に身ながら。血侵は呆れ白けた様子で、そんな言葉を紡ぎ吐く。


「……なんだったんだ?」


 一方、ここまで何が何やらの様子であった、仏基と赤鬼系の女職員。

 内の仏基が、代表するようにそんな訝しむ言葉を発する。


「おかしな結果になったな――やぁれやれ」


 そして最後に。血侵は場を締め括るように、そんな一言を紡いだ。

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