第9話 スーパーラウンド
日本ほど野球が多くの階層に存在する国はないのではなかろうか。
プロとして成功するような人間は、確かにごく一部である。
だがノンプロで活躍する選手もいれば、アマチュアの指導者になる人間もいて、野球関連のビジネスは巨大である。
そういった蓄積が、むしろ害になることもあるが、女子野球においてはさすがに無茶なことはほぼない。
もっとも男性コーチ陣がおかしくなくても、女の敵は女であったりするものだが。
今大会の代表選手たちには、基本的に人間性が困った選手はいなかった。
キューバ戦においては5-2と無難な点差で勝利した。
これは日本だけではなく相手チームも、日本の研究をある程度はしているということなのであろう。
そして最終戦は、オーストラリアとの対戦となっている。
オーストラリアはここまで、二勝二敗。
上位3チームがスーパーラウンドに進出し、そこでまた試合が行われる。
リーグ戦終了時点で、勝率一位と二位のチームが、決勝戦を行う。
そして三位と四位のチームが、三位決定戦を行うのだ。
日本は既に四連勝していて、スーパーラウンド進出自体は決定している。
あとは向こうのグループから、どこが出場してくるかが気になるが、ちょっと不思議なことが起こっている。
台湾とアメリカという、野球人口の多い二国は、順当に勝ち星を上げている。
だが韓国が初戦をオランダ相手に落とした後、連敗しているのだ。
既に三敗しているので、残りの二試合を勝って、しかも運が良くないとスーパーラウンドには進めない。
何があったんだ、と勘繰りたくもなるが、それは首脳陣の仕事だろう。
ただベストメンバーが組めなかった、というのは確かであるらしい。
アメリカと台湾は決まり、、あとの1チームがどこになるかは残りの試合次第。
こちらのグループは日本とカナダは決まっており、残りはドミニカかオーストラリアか。
勝率ではなく、得失点差でスーパーラウンド進出が決まりそうである。
どのみち日本としては、あとは残ったオーストラリアとの試合に臨むのみ。
真琴はスーパーラウンドで二試合投げてもらうため、ここではもう投げないと言われた。
外野の守備に関しては、打球を追いかけるのはいいのだが、中継などのプレイがまだ不安が残る。
どうせ打撃を評価するのなら、ファーストに入れてほしいとも思う次第だ。
あるいはDH枠に入れてもらうべきか。
このままの数字を重ねていけば、決勝のマウンドで好投などすれば、MVPに選ばれてしまうかもしれない。
あの親をして、この子あり。
コーチ陣はそんなことを考えながらも、日常で160km/hを間近で見ていれば、それも当然かなどと思ってしまう。
直史は一時期引退し、コーチをしていた時期がある。
その時期に体の効率的な使い方などを、ある程度は真琴に教えている。
もっともそれは、昇馬も母から習っているものだ。
あらゆる野球選手の中で、最も自分の体の力を上手く使っているのは、大介である。
あの筋量であのパワーというのは、そうでなければ説明がつかない。
小さなスラッガーというなら、アルトゥーべなどもそうであったが、それでも体重は20kgほども差がある。
大介は身長だけではなく、あの体重と筋量で、あそこまで打てるから凄いのだ。
そんな教育を受けていた真琴は、オープニングラウンドのオーストラリア戦でも、やはり活躍した。
スコアとしては6-1と、かなり一方的に近い試合展開となった。
日本はピッチャーの強力さもあるが、それ以上に守備が光った。
また打席も、真琴は二打点を記録している。
オープニングラウンドが終了した時点で、真琴は打点王となっている。
そしてスーパーラウンドに進出するチームも決定した。
日本のグループからは、当然ながらまず全勝の日本。
日本以外のチームには勝っているカナダ。
勝率はオーストラリアと同じであったが、得失点差で三位となったドミニカ。
この三国がスーパーラウンドに進出決定である。
もう一方のグループについても、同じ日に全ての試合は終了している。
ちなみにホスト国の台湾がいるこちらが、グループAであったりする。
台湾は地元開催の利点もあっただろうが、四勝一敗で勝ち抜いていた。
同じ勝率で、アメリカが勝ち抜いている。
そしてこれまた得失点差で、スーパーラウンド進出が決まったのがベネズエラ。
事前の予想とは違い、韓国はオープニングラウンドで敗退していた。
ちょっと不思議なことであるが、野球はそういうこともある。
まして代表というのは、どんどんとこの年代、選手が入れ替わっていく。
たまたま韓国は弱い世代になってしまったのだろう。
もっとも日本などは、ずっと強い世代が続いているのだが。
意外と女子野球の選手層は、韓国は薄い時代があるのかもしれない。
これでスーパーラウンドに進出の、6チームが決定した。
スーパーラウンドにはオープニングラウンドの勝敗が持ち越されるため、日本はグループAの3チームと対戦することとなる。
台湾、アメリカ、ベネズエラ。
なんだかんだ言いながら、男子でもそれなりに、強い国が残っていた。
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