第20話想像の域を遥かに超えた
「ノヴァックこうしゃくけ、ちょうじょ、アイリーンともうします。みなさま、よろしくおねがいいたしますわ。」
せ、せめてお母さま直伝、邸のみんなから淑女コールを浴びた、このカーテシーだけは失敗するわけにはいかないわ。
「おお、噂通りとてつもなく愛らしいな。ヴィルジールよ。」
「そうでしょう、そうでしょう。激しく同意です。」
さすが、昔から家族ぐるみ。お父様が辺境伯様を兄のように慕っているのがわかるわ。公式の場ではないからどちらも砕けた口調なのね。
「ノヴァック侯爵令嬢、初めまして。ノエル・シュナイダーです。ノエルとお呼びください。」
……………………。
!!!危ない、意識が飛びかけた!恐ろしいわ、幼少期ノエル様。想像をいとも簡単に超えてきたわ。いえ、想像に足るとでも本気で思っていたの?アイリーン、愚かね。その浅はかな考えは罪よ。『推しがいる世界は美しい』誰の言葉だったかしら。名言ね。
…!脳内反省会は後。聞こえた?アイリーン。名前呼びですって!!ありがとうございます!!!!!
ああ、ひどい姿をこれ以上御前にさらすわけにはいかないと、突然、お父様の後ろに隠れた私を、どうしたの?の顔でご覧なっておられる。くっ…すみませぬ。
「そ、それでは、ノエルさま、わたくしのこともアイリーン…アリーとおよびください。」
ノエル様がシュナイダー辺境伯様に、『いいの?』と、小さな声で聞いていらっしゃる。
「そうだな、アイリーン嬢には婚約者がいるが、まあ、領地内だけならいいだろう。どうだ、ヴィルジール。」
「ええ、構いません。ノエル君。アリーとも仲良くしてやってくれ。」
よし!お許しが出たわ。お父様の顔と台詞が一致していないのは、気のせいね。
それにしても、お兄様と同じ年なのにずいぶん大人っぽい、しっかりしている気がする。
「ノエルー!」
「あ、ユーグ!」
あ、そうでもなかったわ。仲良しさん2人が手を取り合ってぴょんぴょんしている。すでにギャップ萌えとは。
不思議ね、小さな天使が周りを飛んでいるわ。ふふふふ。あ、いけない。まだ、拝んでいたいところだけれど、この隙に、着替えを。ボニー行くわよ!!
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髪の上側だけを一つにまとめて留め、あとはふんわり垂らしたハーフアップ。
お父様の瞳の色のシャンパンゴールドの髪留め。
フリルを贅沢に使ったアシンメトリーデザインのエメラルドグリーンのドレス。
気品と萌え要素を兼ね備えている美幼女、完璧よボニー。
さあ、夕食会へいざ出陣。
「おまたせいたしましたわ。」
ノエル様がちょうど席に付こうとしていたわ。使用人たちから、ほぅという感嘆のため息が聞こえる。
わかるわよその気持ち。私も、ノエル様のお姿から目が離せないもの。あまりにも凝視をしていたからか、ばちっと目が合ってしまったわ。
「アリーは何を着てもかわいいね。」
※□◇#△!はにかんだノエル様から、愛称呼びとお褒めのお言葉、いただきました。
何卒何卒、先ほどの私は上書きでお願いします。是非ともなかったことに。
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