第19話なんてこと!!!
馬車での旅もそろそろ終わり。やはり、転移魔法。必須ね。お尻が割れそうよ。
間もなく見えてくる侯爵領。お父様の話だと、北の地域にしては気温が穏やかで、広大な敷地にはいろいろな種類の作物を栽培しているのだとか。
よかったわ。農業の知識がないから、領地の作物が不作だったら、転生者だというのに役立たずもいいところだった。
反対に、辺境伯では、魔物や魔獣の出現への対応で土地が荒れ、作物が思うように育たないため、侯爵領の作物と魔物たちからとれる魔石とを交換しているのだそうだ。しかし、魔石の出現率は高くなく、そのため、交換できる作物の量が限られており、伯爵家とはいえ生活はあまり裕福ではないようだ。魔物などの討伐に対する国からの褒賞も少ないなんて、ひどい話よね。
お父様は、魔物が流れ込んできたら、侯爵領も無事では済まないため、作物を無償で渡そうと何度もしたのだそうだが、頑なに、シュナイダー辺境拍伯爵が頷かないと苦笑しておられたわ。
推しの食生活が心配だけれど…さすがノエル様のお父様。男前!もらえる物は何でももらう精神の私とは大違い。
それにしても魔石。宝石のように美しく、魔力を注ぐと無限の活用方法があるなんて。It's ファンタジー。
侯爵家直営の商会では、この魔石に付与を施し、アクセサリーとして売り出していると聞いたわ。主にお母様の担当らしいから、こちらは力になれそうね。こう見えて私、ファッション留学をしたことがあるのよ。短期だけど…。いつも護衛服だったノエル様の衣装、着けていただきたいアクセサリーを何度デッサンしたか。まさか現物を作り出せる機会があるなんて、思ってもみなかったわ。
馬車ががたがたと荒っぽい音を立てて走る。
限界を迎え、お父様の膝の上によじ登り、大きな手で撫でられていたら、うとうとよ。きっと目覚めたら領地ね。
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「さあアリー、もうすぐ着くよ。起きて。」
この目の前にいる麗しい美形は!…お父様だったわ。なかなか慣れないわね。
「あ、ノエルだ!ノエルー!」
ふふ、ノエル様?いやだわ。お兄様も寝ぼけていらっしゃるの?
どれどれ?外で、手を振る子がいるわね。風になびく漆黒の髪、遠くからでもわかる顔のパーツの美しさ。瞳には空の色が移ったのかしら。素晴らしくきれいね。まるで、思い描いた幼少期ノエル様のようだわ。
……。―――――――――っ!!!!う、うそでしょ。
待って、心の準備が。いや、顔面の準備も駄目よ。ひどい!寝癖がついているじゃない。よだれは?まさか口元や服によだれのあとはないでしょうね。服!?ワンピースじゃない!!白ですって?か、確認を。ちょっとの汚れも許さないわよ。
いや―――!!!しわになっている。ボニー、ボニーはどこ?なぜ同じ馬車に乗っていないの?今こそ、あなたの生活魔法が必要よ。
ひっ!お父様抱きかかえないで。まだ、降りるわけにはいかないの。…あぁ、終わったわ。最低な状態で推しに会うことになるなんて…。
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