第17話試行錯誤

…牛乳パックがないわ。


この世界、トイレは水洗だし、なんと、トイレットペーパーまであるから、なんとなく勝手にあると思っていたわ、牛乳パック。


昔、自由研究でやったのよ。再生紙づくり。再生紙=牛乳パックでしょ。

牛乳瓶かあ。盲点だったわ。また、振りだしね。



まって、お兄様、紙に手紙を書いていたじゃない。羊皮紙ではなかったわ。

書き損じ!お父様のところにたくさんないかしら?



********************


「おとうさま、おしごとちゅう、ちょっとよろしいですか?」


「アリー!大丈夫だよ。さあ、ここにおいで。」


お膝の上でしょうか?


「どうしたんだい。何かお願いかな?」

「ええ、じつは、もしありましたら、かきそんじたかみを、いただけないかとおもいまして。」

「紙かい?こういうのでいいのかな?」


ふむふむ、おっ!きちんとパルプ紙っぽいですわね。ヨーロッパでは、ボロきれなどを原料に紙を作っていたと聞いたことがあったけど、これなら…。


「これでだいじょうぶですわ!たくさんいただけます?」


「ああ、そうだな。セルジュ、アリーが見ても大丈夫そうなものを選んでやってくれ。さあ、私の天使。何に使うのか教えてくれるかな?」


「ふふふ、これは、おとうさまにも、ないしょですわ。」

上手くいかないかもしれないしね。



「そうなのかい。秘密のあるレディも素敵だが、そうだな、すこし寂しいな。」

…愁いを帯びた笑み。お父様、私、絶対成功させますわ。


********************




大変よ。もうすでに行き詰ったわ。

紙を小さくちぎって水に入れ、ミキサーに入れたいのだけれど、ミキサーがない…。


もっと細かくちぎる?お湯にしたらほぐれるかしら。


「お嬢様、その不思議な物体はなんです?」


不思議な物体!?よね…。


「ボニー、かみをね、みずにとけるくらい、こまかくほぐしたいの。どろどろにね。」



「はあ、なぜそのようなことを?あーでも、ジルならできると思いますよ。」


ジルとな?


「ほら、お嬢様の大好きなソルベを作っているシェフのジルですよ。果物を細かく砕いて液状にするのと同じですよね。それでしたら、ジルの魔法できっとできます。ちょっと行ってきますから、お待ちくださいね。」


魔法?そうだった。魔法がある世界だったわ。わお、魔法というマジックで大抵のことは何でもできそうじゃない。

********************



結果…できたわ!後でジルにお礼を言わなきゃ。


よし、これを容器に入れて、作っておいた押し花を乗せる、と。

いいわ。順調よ。水を切って乾かしたら完成ね。


「ボニーあなた、これ、まほうでかわかすことってできるかしら。」


なーんて。


「できますよ。お嬢様の髪を毎日乾かしているのは、誰だと思っているんです?私、生活魔法得意ですから。」



すごいわ!!!ボニー。でもなぜかしら、ドヤっている顔が腹立たしいわね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る