第16話推しへの貢ぎ物

うふふ、ふふふふ

笑いが止まらないわ。


この度、私、領地に行くことになりましたの。



もともと、5歳になったら領地に連れて行く約束をしていたからと、次の視察に連れて行っていただけることになったのよ。



潤んだ瞳、今回も出番がなかったわ。イージーモードね。




推し活の定番、推しに会いに行くこと!3次元になった今、それが可能となった。このチャンスは、絶対に無駄にしない。 領地に行ったところでノエル様に会えるとは限らないが、今回はお兄様も一緒に行くの。なかよしさんのお兄様が近くに来るのだから、いらっしゃるわ!そんな予感でいっぱいよ。


さて、最高の状態で推しに会うために準備しなくてはいけない、さあ、時間がないわよ、アイリーン。

ドレスは、ノエル様の瞳の色の青でいいかしら。いやまて、初対面で推し色に染まっている女、響きがぞっとするわ。

推しへのプレゼントは、どうしましょう。好みじゃない物は贈りたくないけど、寸分の狂いなく好みの物というのも気持ち悪いわね。


難しい、難しいわ。いっそのことボニーに一任しようかしら。



…アイリーン、ボニーは悪手よ。まだ、ノエル様の名前が出ると納得のいっていない顔をするのだから。子爵家での令嬢教育大変だったでしょうね。

ええい、弱気になっちゃダメ。実生活で疲れた時や落ち込んだ時も、ノエル様の存在が私を励まし、癒やしてきたじゃない。人任せなんて、ありえない。



そうよ!ノエル様とは初対面よ。焦らないわ。今回は、「推しを感じる」それだけに集中しましょう。ノエル様にお目にかかり、現実に生きて存在していることに感謝する。なんて、素晴らしいの。


それに私、自分のお金を持っていないのだったわ。お願いしたら、何でも買ってもらえそうだけど、親のお金で推し活は、さすがに気が引ける。

幼女だもの、買った物より手作りが無難よね。このぷにぷにお手手で作れるものって何かしら。



********************


だめだわ。…肩たたき券しか思いつかん。




「ふふふーーーーん♪」


あら、お兄様ご機嫌ね。何の鼻歌かわからないけど、天使のお兄様が奏でる歌はすべて讃美歌よ。


「おにいさま、さっきから、なにをかいているのです?」



「ん?これ?ノエルからおへんじがきたから、また、おへんじをかいているんだよ。こんど、りょうちにいくこともかいているんだ。」



…お兄様、私の嫉妬に再び火をともしましたね。



手紙?レターセット!


いい、いいわ。手作りレターセットいけるわ。お兄様と手紙のやり取りをしているのだから、「なぜこれを私に?」には、ならないはずよ。


そうと決まれば、さっそく取り掛かるわよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る