第15話推しの有力情報

落ち着いて、落ち着くのよアイリーン。深呼吸よ。

すぅ―――はぁ――――――

よし、悔しがっている場合じゃないわ。



ボニーが言っていたじゃない。お兄様とノエル様は交流があったと思う、と。



あー失敗したわ。お父様を待たずとも、お兄様から、ノエル様のことを聞けたのではないの。お手紙のやり取りをなさっているのなら、なおのこと…。あー、己の愚かさが、悔やまれる。人生は短いというのに。



でも、待つのよ。ここは慎重にならないと。ノエル様を無意識に連呼して、あのボニーにすら怪訝な顔をされたじゃない。お兄様はともかく、お父様には、すぐ怪しまれてしまうわ。


ここは、当たり障りのない会話から情報を引き出すことにしましょう。



「ねえ、おとうさま、ノエルさまとは、どなたです?」


…やめてボニー、目をぱちくりさせないで!あなたも一応、子爵家の令嬢でしょ。感情を顔に出してはいけないわ。


「おお、そうか、アリーは会ったことがなかったね。ノエル君は、シュナイダー辺境伯の次男で、ユーグとは年が同じなのだよ。シュナイダー辺境伯領は、我が侯爵領の北に位置していてね。何代も前から、家族ぐるみの付き合いをしている仲なんだ。」



「ノエルとは、なかよしさんなんだぁ」



「ふふ、そうね。ノエル君のお兄様は、年が離れているから、ユーグと会うのを楽しみにしているとシュナイダー辺境伯夫人も言っていたわ。」


くぅ―――ジェラシーですわ、お兄様。


じゃあ、悪役令嬢アイリーン・ノヴァックは、ノエル様のことを学院前から知っていた可能性は高いわね。


ということは、ということはですわよ、私、学院前にノエル様に会える可能性が大ということですわね。


キタ―――(゚∀゚)━━━!!!!これは、何としてでもお父様に領地に連れて行ってもらわなければ!!!



********************


ああ、とても有意義なディナーだったわ。ノエル様の情報も手に入れたし、いろんな意味でおなかがいっぱいよ。満足、満足。この調子で、どんどん情報を引き出してみせるわ。



「あの~、お嬢様?私、お嬢様にシュナイダー辺境伯令息様のお話をしたような…?お坊ちゃまから聞いたとも…。あれ?」



ボニー、あなたのその問いには、答えてあげないわよ。スルーよ。あら、前もこんなこと思ったわね、デジャブ。


このあいまいな微笑みで察して頂戴。



「???熱で覚えていらっしゃらない?いや、熱は下がった後だったような…。あ、置いて行かないでくださいよー、お嬢様ぁー」


そのまま勘違いと思ってくれたら、みんなが幸せよ、ボニー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る